第1章:家は、空気でできている ― 断熱も気密も、“深呼吸できるかどうか”が基準
「その家、ちゃんと深呼吸できますか?」
僕がリノベーションの打ち合わせで最初に投げかけるのは、そんな問いです。
床材やキッチンの話よりも、何よりも先に、“空気の質”の話をする。
それは、京都という街が持つ特殊な気候条件と、
そこに住む人の“体で感じる暮らし”のために、どうしても避けて通れないテーマだからです。
京都の気候は、極端です。
夏は湿気が重く、家がカビる。
冬は底冷えが厳しく、足元から冷気が這い上がってくる。
「湿気で家が壊れ、冷えで人が疲れる」
これが京都リノベにおいて、絶対に外せない現実です。
では、この厳しい気候の中で、どうすれば心地よく暮らせるのか?
その答えが、断熱・気密・換気の3要素を軸に据えた「空気設計」です。
見た目のデザインではなく、見えない空気をデザインすることこそが、暮らしの快適さを左右する。
僕たちキノスミカでは、
素材でも間取りでもなく、まず「空気の質」から設計を始めます。
なぜなら、空気は毎日吸うものだから。
そして、空気は家の寿命にも、人の体にも、確実に影響を与えるものだから。
この記事では、
- 京都のリノベーション価格はなぜ上がりやすいのか
- どこに予算をかけるべきか
- 見た目ではなく“空気の質”を整える設計とは何か
を、僕の経験と思想を交えながら、丁寧に掘り下げていきます。

第2章:なぜ京都のリノベは高くなるのか?相場と価格の“構造”を読み解く
「京都 リノベーション 価格」
「京都 リノベーション 相場」
そんな言葉で検索している人の多くが、本当はこう思っているはずです。
「なぜこんなに高いのか、納得できる説明がほしい」
「自分たちの予算で、本当にリノベできるのか不安だ」
その不安、よくわかります。
でもまず伝えたいのは、“京都は特別だ”という現実です。
◉ 京都のリノベ価格が高くなる5つの理由
1. 狭小地・接道条件が悪い → 工事の人件費が上がる
搬入が手運び、作業スペースが取れない、騒音配慮。
目に見えないコストがじわじわ積み重なる街、それが京都です。
2. 景観・法規制が厳しい → 指定素材・制限で単価上昇
「この色はダメ」「この形は変えられない」
自由にデザインできないからこそ、逆にコストが上がるという矛盾。
3. 町家や築古物件の“構造リスク”
土台の腐食、柱の傾き、シロアリ被害。
「床が少し沈むだけかと思ったら、構造からやり直しだった」
これ、本当によくある話です。
4. 耐震・断熱の“ゼロから”改修
築30年以上の物件の多くは、
そもそも断熱材が入っていない、耐震性能ゼロに近い。
やるなら“ゼロから全部”になるから高くなる。
5. 設計と施工のバランス崩壊
設計が暴走すれば予算が崩壊し、
施工が主導すぎれば暮らし心地が置き去りにされる。
リノベには、思想と現場の間の“翻訳者”が必要なんです。
◉ 坪単価だけを信じていると、後悔する
ネットでよく見る「坪60万円〜」という表記。
それは、“最低限の内訳”であることがほとんどです。
- 断熱:× 気密:× 換気計画:×
- キッチン・ユニットバス:ローグレード品
- 下地・構造補強:一式見積もり
「同じ坪数なのに、なんでうちはこんなに高いの?」と悩む前に、
“含まれている内容”を見ないと、本質は見えてきません。
◉ 高くなる理由を知ることは、正しい判断への第一歩
価格は「高いか安いか」ではなく、
**「何が含まれていて、何が削られているのか」**で評価すべきです。
つまり、京都のリノベ価格が高くなるのは、
**“丁寧に暮らそうとすると、それだけ設計と施工が複雑になるから”**なんです。
第3章:そのお金の使い方で後悔しない? “選ぶ”じゃなく“見抜く”ためのリノベ予算戦略
リノベの相談を受けていて、
「予算は限られていて…」という言葉を聞かない日はありません。
でも本当に悩んでいるのは、
「このお金の使い方で、あとから後悔しないだろうか」
「誰の意見を信じて、何を優先すべきなんだろうか」
という“選択の不安”です。
◉「素材か、性能か」ではなく、「暮らしの芯」をどこに置くか
以前、自然素材に強くこだわったご家族がいました。
土壁に左官、無垢の床材と真鍮の金物。
僕はそのこだわりに共鳴したし、美しさにも感動した。
でもその家族は、冬の間、家の中でダウンジャケットを着ていた。
「ありがとう。美しい家をありがとう」
と言ってくれたけれど、僕は胸が苦しくなった。
素材を選ぶことは、思想です。
でも、断熱や気密を削ってまで実現する“美しさ”に、暮らしは乗らなかった。
◉ 「予算配分」は“金額”ではなく“価値観の優先順位”
僕が現場で実践している配分の軸は、こうです。
- 断熱・気密・換気=空気の基礎工事
→ 暮らしやすさの“体感”に直結する/やり直しがきかない - 動線・間取り=思考の設計
→ ストレスを減らし、時間を生み出す/調整の余地あり - 素材・デザイン=感情の豊かさ
→ あとから足せるもの/楽しみとしての余白
この順番は、**施主の感性を否定するためではなく、“暮らしを守る順番”**として伝えています。
◉ 後悔は「削った場所」ではなく「知らなかったこと」から生まれる
後悔するのは、「ここをケチったから」じゃないんです。
「あの時、断熱をやっておくべきだった」
「こんなに湿気がひどいとは思わなかった」
そういう“知らなかったこと”に直面したとき、予算の配分は悔しさに変わる。
だからこそ、僕たちは価格ではなく“構造”と“空気”を伝える義務がある。
◉ 価格ではなく、“生活の軸”をつくるお金の使い方を
家づくりの打ち合わせでは、
「●●万円です」と伝えると、皆さん一度黙る。
でも僕は、その沈黙のあとで必ずこう言います。
「これは、建物の値段じゃないんです。
“これからの暮らしを、どう組み立てるか”の設計図です。」
その瞬間、会話のトーンが変わるんです。
素材の話ではなく、暮らしの選び方の話になる。
第4章:断熱と空気の設計は“見えないコスト”か? ― 僕が譲れない理由
リノベーションの見積もりを見ると、
「断熱一式:500,000円」「換気設備一式:350,000円」といった表記がよく出てきます。
でも、その“中身”がどこまで説明されることがあるでしょうか?
どんな性能なのか、どう施工されるのか、それが暮らしにどう効くのか。
ほとんどの人が、そのままサインをしてしまう。
だからこそ、僕ははっきり言いたいんです。
「空気は、“一式”で済ませていいものじゃない」
◉ なぜ断熱・気密・換気は“見えない”のに譲れないのか?
見えないからこそ、施工の良し悪しが露呈するのは、住み始めてからです。
- 冬、エアコンを入れても足元が冷たい
- 夏、湿気がこもって寝苦しい
- 窓を閉めていてもカビ臭い空気が抜けない
こうした“違和感”は、すべて空気設計の精度に起因します。
そして、それらは後からでは取り返しがつかない。
◉ 断熱材の種類だけでは語れない、“施工と設計”の本質
断熱は「何を使うか」ではなく、
“どう設計し、どう納めるか”で効果が決まります。
たとえばセルロースファイバーを選んでも、
・適切な厚みがなければ断熱性能は出ない
・気密処理が甘ければ性能は抜けていく
・換気とのバランスが悪ければ、結露が発生する
つまり、断熱・気密・換気は三位一体。
どれか一つでも欠ければ、空気は濁り、暮らしは重くなる。
◉ 僕が「これは絶対に削れない」と思う理由
施主に「ここを削ってもいいですか?」と聞かれて、
他のことならケースバイケースで答えるけれど、
断熱と空気設計だけは譲れない。
それは、僕がたくさんの後悔を見てきたからです。
「寒い」「結露がすごい」「夏がつらい」
その一言に込められた暮らしの疲れを、何度も目の当たりにしてきたから。
お金はもちろん大事です。
でも、僕はこう考えています。
「そのコストを“見えないもの”とするか、
“暮らしの土台”とするかで、住まいの意味が変わる」
空気の設計は、感覚に効く設計です。
数字では測れないけど、呼吸の深さに確実に現れる。
だから僕は、それを“思想”として持ち続けている。
第5章:設計図では見えないものを、空気が教えてくれる
リノベーションの打ち合わせでは、何枚もの図面が机に並びます。
間取り、仕様書、見積もり。すべて数字で構成されていて、
一見すると“家づくりが計画的に進んでいる”ように見える。
でも僕は、いつもこう思っています。
「設計図には、本当に大切なことが載っていない」
それは、朝の温度差にちょっと苛立つ気持ちだったり、
湿気が抜けずに感じる不快感だったり、
子どもが裸足で走れるかどうかの感覚だったり。
そういう、**体で感じる“空気の記憶”**が、家の本当の価値を決めている。
◉ 空気は、嘘をつかない
図面や説明では、「断熱は十分です」と書かれている。
でも、実際に住んでみると寒い。湿気がこもる。なんだか空気が重い。
そのとき人は、初めて気づくんです。
「ああ、自分の家の“空気”は設計されていなかったんだな」と。
僕はこれまで、たくさんの家とたくさんの空気を見てきました。
断熱材の入れ方ひとつ、換気のルートひとつで、
空間の居心地も、人の呼吸も、まるで違ってくる。
それは設備の性能じゃなくて、設計の思想そのものだと、僕は思っています。
◉ 価格よりも、空気を基準にするという選択
もちろん、価格は大切です。
でも価格は、選択の結果であって、基準ではない。
「この家で、ちゃんと呼吸できるか」
それを最初の基準にして設計できたなら、
選ぶ素材も、かける予算も、自ずと見えてくるはず。
◉ 暮らしは“空気の質”で決まる
キッチンが最新でも、空気が重たければ料理をしたくなくなる。
床が無垢材でも、冷えすぎていれば歩くのが億劫になる。
結局、空気が整っている家こそが、暮らしやすい家なんです。
これは抽象的な感覚ではなく、温度・湿度・気流という明確な設計項目で構成される「設計としての空気」です。
◉ 「この空気で生きていきたい」と思えるか
僕が現場で感じる最高の瞬間は、
完成した家に一歩入って、呼吸がスッと通る瞬間です。
光でも素材でもなく、空気で“あ、この家は大丈夫だ”とわかる。
その空気の中で、家族が笑っていたら、もうそれ以上の完成はない。
図面に載らないものを、
見積もりに書かれない価値を、
「空気」が教えてくれる。
それが僕の家づくりの哲学です。
まとめ
設計とは、空間を整えるだけじゃない。
呼吸を整えること。人生の流れを整えること。
「この家で、深く呼吸できるか?」
それを一緒に考えられたとき、はじめて“暮らしを設計した”と言える。
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🔹 京都リノベの価格はなぜ高い?「坪単価」に潜む5つの落とし穴
🔹 賢いリノベーション予算の立て方|優先順位と後悔しない順番
🔹 断熱・換気・気密の基礎がわかる|“空気の質”にこそ予算を使う理由
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