1章:部分断熱は意味がない?本当に暮らしを変える“戦略的リフォーム”という考え方
「どうせ断熱するなら、全部やらなきゃ意味がない」
「部分断熱なんて効果ないって聞いたけど…」
そんな声があるのも、正直わかります。
でも──
部分断熱が“中途半端な工事”になるか、“未来に繋がる選択”になるかは、設計次第です。
僕は、部分断熱は**“あり”だと思っています。**
ただし、それにはいくつかの条件がある。
- 暮らし方をもとに「断熱すべき場所」を見極めること
- 結露やヒートショックの“連鎖”を起こさない設計であること
- 今後の予算や計画に“つなげられる仕組み”であること
◉ 最初に考えるべきは「どこで暮らしているか?」
断熱の優先順位は、「長く過ごす空間」から考えるのが基本です。
つまり、リビングを中心に整えていくのが戦略的な第一歩。
とはいえ、リビングだけ断熱しても──
- 廊下や洗面所が極端に寒ければ、結露や温度差ストレスを生みやすい
- トイレや脱衣室との気温差が、ヒートショックの引き金になることもある
だから僕は、
「リビングを中心にしながらも、洗面・トイレ・浴室は必ず連動させる」
というルールで部分断熱を設計しています。
(※このあたりの温度差・ヒートショックに関する医学的/建築的エビデンスは、後ほど根拠付きで補完します)
◉ 部分断熱は「施工と設計」で決まる
断熱材の種類よりも大切なのは、どこに・どう入れるか。
素材がセルロースでも、グラスウールでも、施工精度と設計意図がないと無力なんです。
- 気流止めがない
- 断熱材が袋のまま突っ込まれている
- 壁体内の通気層がぐちゃぐちゃになっている
これらは全部、「効果が出ない部分断熱」になってしまう原因です。
僕は、予算が限られるなら、高価な素材を使うより、きちんと設計できる範囲に絞って精度を上げるべきだと思っています。
◉ 「予算がないから部分断熱で」──それは最高の決断かもしれない
もし誰かが「予算がないから、部分的にしかできないんです」と言ったら──
僕は、こう答えます。
「それ、最高の判断ですよ」
部分断熱は妥協じゃない。
限られた条件で、最大の成果を出すための“戦略”です。
2章:部分断熱で失敗する家、成功する家 ― その分かれ道はどこにある?
「部分断熱で快適になりました」
という声もあれば、
「断熱したのに寒いまま…」
という声もある。
この違いはどこから生まれるのか?
それは、設計と施工の“見えない精度”の差です。
◉ 失敗する部分断熱リフォームの典型例
【失敗例①】設計思想の欠如
→ 「とりあえずリビングだけ」と部分的に断熱を入れたが、
洗面室や廊下との温度差が激しくなり結露が発生。
→ 結局、リビングのサッシや床にもカビが…。
【失敗例②】“断熱材を入れた気になっている”だけ
→ 袋入りのグラスウールを壁に突っ込んだだけで、気流止めなし・隙間だらけ。
→ 実際は断熱しているつもりでも、空気がスカスカに抜けている状態。
【失敗例③】断熱エリアのバランスを無視した施工
→ 北側の浴室や洗面室を無視したまま、LDKだけを高断熱化。
→ 入浴時に気温差でヒートショックリスクが高まり、家族の健康に影響が出た。
これらはすべて、“やったつもり”の部分断熱で起きているんです。
◉ 成功する部分断熱は「範囲」より「連携」が決め手
では成功する家はどうか?
それは、断熱エリア同士が“連動している”ことが共通しています。
たとえば──
- リビングを断熱したら、そこに接する廊下や洗面室も“最低限の断熱”でつなぐ
- トイレの気密・換気経路を整え、冷気の侵入ルートを断ち切る
- 北側の浴室には、断熱と同時にヒートショック防止の温熱動線設計を行う
つまり、断熱の“面”ではなく、空間の“線”を整える発想が必要なんです。
◉ 成功か失敗かは、「見える快適性」ではなく「感じる温熱環境」
快適さは、断熱材の厚みや数値では測れません。
- 寒くない
- 足元が冷えない
- 湿気がこもらない
- 空気がこもらず動いている
こうした体感を支えているのは、**設計と施工の“思想の一貫性”**です。
部分断熱は、バラバラにやるとチグハグになる。
でも、“流れ”を意識すれば、驚くほど快適な空間が手に入ります。
3章:予算内で断熱効果を最大化する「優先順位」と「施工順」の考え方
「全部断熱したいけど、予算が足りない」
これは誰もが抱えるリアルな悩みです。
でも安心してください。
全部やらなくても、断熱の“戦略”があれば快適は手に入ります。
◉ 優先順位①:まずは“体感温度”に直結する場所から
暮らしの中心となるのは、おそらくリビング。
長時間いる場所が寒いと、どんなに性能が高い家でも快適になりません。
→ 最初に断熱すべきは、リビングの床と窓。
- 床断熱は「底冷え」の根本を断ち切る
- 窓断熱(二重窓・内窓)は「熱の出入り口」に蓋をする
ここを抑えるだけで、体感の70%が変わることもあります。
◉ 優先順位②:次に“動線と健康”に関わる水回り
冬のヒートショックリスクが高いのは、
脱衣室・浴室・トイレです。
→ 特に洗面室は、温度差が健康に直結しやすい。
- 浴室:天井断熱+ユニットバスまわりに気流止め
- 洗面室:床と外壁に断熱+換気と暖房設計
- トイレ:外壁があるなら、最小限の断熱補強を
ここまで整えれば、「安全な温熱環境」が整います。
◉ 優先順位③:次に考えるのは“冷気の侵入経路”の遮断
断熱していない家で多いのが、「暖房してるのに寒い」問題。
その多くは、床下・換気経路・玄関などの“隙間”が原因です。
→ 優先すべき対策:
- 床下断熱+気流止め
- 勝手口・玄関の気密ドア化
- 換気ファンまわりの断熱処理
断熱材よりも「空気の通り道をコントロール」するだけで、熱損失が劇的に下がります。
◉ 施工順の鉄則:「触るタイミングを逃すな」
予算が限られていても、以下の鉄則は守るとコスパが高い:
- キッチンリフォームのとき → 床下断熱と一緒にやる
- 外壁工事のとき → 外断熱または内壁断熱の下地を仕込む
- 窓交換は → 大開口から先に。寒さに直結するから
設備より、素材より、
「いつ・どこをやるか」の設計が、住まいの快適さを左右します。
4章:「部分断熱でも大丈夫」な家とは?将来につなげる設計と考え方
「部分断熱って、やっぱり中途半端なんじゃないですか?」
そんな不安を抱えたまま、
結局リフォームに踏み切れない方はとても多い。
でも僕ははっきり言います。
部分断熱でも、大丈夫な家はつくれます。
ただし、それには「未来を見据えた設計」が必要です。
◉ 今、全部やらなくていい。でも、“次につなげる道筋”を設計する
部分断熱で大切なのは、**「やらない部分をどう残すか」**という視点。
たとえば──
- 将来、寝室にも断熱を入れたい
→ 今は床下の点検口や配線ルートを確保しておく - 内壁断熱をいつか施工したい
→ 先に気流止めや電気配線の逃げ道を整えておく - 窓の交換はまだ先
→ 今は内窓を設置し、サッシ更新の時期を設計に落とし込んでおく
「あとで困らないための設計」をしておけば、部分断熱は“始まりの一歩”になる。
◉ 「段階的リフォーム設計」という考え方
今すぐ全体断熱をするのではなく、
フェーズごとに断熱を強化していく考え方です。
1stステップ
リビング・水回り・床下断熱
2ndステップ
窓の強化、換気の設計、冷気ルートの遮断
3rdステップ
壁・屋根・寝室エリアへの断熱拡張+気密バランス調整
このように分けて考えると、無理なく、でも確実に快適性が積み上がっていく。
そして何より、
「今できる範囲でベストを尽くした」という感覚が、住まいへの納得感と愛着につながる。
設計とは、全部をやることじゃない。
“暮らしの変化と未来”に寄り添っていく行為なんです。
5章:断熱は“贅沢”ではない。安心して暮らせる最低ラインという設計思想へ
「うちはそんなに予算がないから、断熱までは贅沢かな」
「寒さは我慢すればいい。見た目がきれいになれば十分」
──そんなふうに言われることがあります。
でもね、それ、本当に“贅沢”ですか?
僕は、断熱こそが**「安心して暮らせる最低ライン」**だと思っています。
◉ 見えない快適さは、暮らしの土台になる
リビングの床が冷たくない
脱衣室でヒヤッとしない
寝室の空気が澄んでいる
子どもが風邪をひきにくくなる
こうした感覚は、
新しいキッチンやおしゃれな照明よりもずっと長く、暮らしの中に作用し続けます。
「温度が一定で、空気がきれいで、深呼吸できる」
それは、設備の豪華さとは違う、
**“暮らしの静かな安心”**です。
◉ 部分断熱でも、それを目指す設計はできる
無理に全部やらなくてもいい。
でも、「どこまでやれば安心できるか」を知ることは大切です。
- 体が緊張しない空間をつくる
- 動線ごとの温度差をなくす
- 将来に拡張できる仕組みを残す
こうした設計こそが、本当の意味での“快適な住まい”づくりなのだと僕は思っています。
断熱は贅沢じゃない。
それは、「毎日を安心して過ごせるかどうか」の最低ラインなんです。
この記事が、
「全部はできないけれど、何かはやりたい」と考える人の
**“最初の一歩を肯定する設計の提案”**になれたら嬉しいです。
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でも、「これなら、自分たちらしく暮らせそう」と思える選択肢は、ちゃんとあります。
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