断熱材はどれが最適?京都でのリノベーションに強い素材と選び方

中古リノベ

第1章|断熱材って、何を基準に選べばいいの?
「ウール、セルロース、グラスウール、ウレタン…。結局どれがいいんですか?」

断熱材の選択に悩む方は少なくありません。
しかも最近では、“自然素材がいい”“健康に配慮したい”という声も増えてきています。

でも僕はまずこう問いかけます。

「その断熱材は、空気のために、誰のために選びますか?」

つまり、「性能」だけでなく「暮らしとの相性」で選ぶ時代が来ているんです。

“数値の比較”から“空気と体感の設計”へ
断熱材は、熱伝導率(λ値)や厚み、価格で比較されがちですが、
本当に大切なのは、その家の気候・構造・住まい方に合っているかどうかです。

たとえば:

京都のように湿気が多い地域では、吸放湿性が高い素材が相性◎

壁を全部解体できないリノベでは、施工性が高い素材が有利

気密性も高めたいなら、素材の“隙間の出にくさ”も重要

断熱材は「材料」ではなく、“空気を整える装置”。
その考え方で選ぶと、見えてくる景色が変わってきます。

僕たちが素材を選ぶときの“4つの軸”
① 湿気との相性(京都特有の底冷え対策)
→ 調湿性、結露リスク、乾燥時の性能維持

② 工事との相性(リノベ現場での納まりやすさ)
→ 柔軟性、切断・充填のしやすさ、手間の少なさ

③ 健康・安全性(子育て世代や高齢者が安心して住める)
→ ホルムアルデヒドの放散、化学処理の有無、アレルゲン要素

④ 維持管理性(メンテナンス・入れ替えの容易さ)
→ 経年劣化、虫害・水濡れ時のリカバリー

性能の比較では見えない、“暮らしにとってのリアルな相性”を、断熱材選びの基準にすることが大切です。

  1. 第2章|自然素材系 vs 高性能系|京都で本当に相性がいいのは?
    1. 自然素材系のメリット・デメリット
      1. 代表例:セルロースファイバー、羊毛断熱、炭化コルク、木質繊維ボードなど
      2. メリット:
      3. デメリット:
    2. 高性能系(グラスウール・ウレタン・フェノール)のリアル
      1. 僕たちがよく使う:高性能グラスウール(16K〜24K)
      2. メリット:
      3. デメリット:
    3. 京都で選ぶなら「気候・予算・将来性」のバランスで
  2. 第3章|“素材”より“納まり”で差がつく|断熱材選びの落とし穴
    1. よくある“素材優先”の失敗例
      1. ケース①:セルロースファイバーを選んだけど…
      2. ケース②:硬質ウレタンを壁に吹いたけど…
    2. 僕たちが断熱施工で一番に考えるのは「現場対応力」
    3. 「断熱=断熱材」ではない。施工こそが断熱の要
  3. 第4章|“壁に入れたら終わり”じゃない|メンテと将来性も素材で変わる
    1. 断熱材の劣化って、どう起きるの?
    2. 自然素材系 vs 高性能系|メンテナンス性の違い
      1. 自然素材系(セルロースファイバー・羊毛など)
      2. 高性能系(高性能グラスウールなど)
    3. リノベーションでは、「将来メンテも想定して選ぶ」が鉄則
  4. 第5章|素材選びより空気をどう整えるか|断熱材の本当の価値
    1. 性能値よりも“呼吸したくなる空気”を設計する
      1. 空気の質を左右する要素:
    2. “深呼吸したくなる家”は素材の選び方から始まっている
    3. 最後に:断熱材は、快適性を生む“名脇役”である
    4. ▶ 「何を入れるか」ではなく「どう暮らすか」から選ぶ断熱材

第2章|自然素材系 vs 高性能系|京都で本当に相性がいいのは?

「やっぱり自然素材がいいですよね?」
「グラスウールって安いだけでしょ?」
──そんな声、たくさん聞いてきました。

でも現場に立つ僕の答えは、**「それ、予算と暮らしに合ってますか?」**という問い返しです。

断熱材選びは、“素材への憧れ”だけで進めると、
施工性・コスト・性能のどれかで後悔する可能性があるんです。


自然素材系のメリット・デメリット

代表例:セルロースファイバー、羊毛断熱、炭化コルク、木質繊維ボードなど

メリット:

  • 吸放湿性が高く、京都の高湿度に相性がいい
  • ホルムアルデヒドがほぼ出ないなど健康面で安心
  • 自然素材独特のやわらかい空気感が得られる

デメリット:

  • コストが高い(施工費込みでグラスウールの2〜3倍も)
  • 専用機器・専門技術が必要で、対応できる施工業者が限られる
  • 水濡れや虫害時の復旧コストが高い

つまり、性能と空気感は魅力だけど、予算的なハードルは高めです。


高性能系(グラスウール・ウレタン・フェノール)のリアル

僕たちがよく使う:高性能グラスウール(16K〜24K)

メリット:

  • 熱伝導率が低く、厚みの調整で必要な断熱性能を出しやすい
  • コストパフォーマンスが非常に良い
  • 現場対応力が高く、変形壁や部分施工にも強い
  • 乾式施工と組み合わせれば、湿気対策も可能

デメリット:

  • 自然素材と比べると、空気の質感に差が出ることもある
  • 素手で触るとチクチクする、施工者の快適性は落ちる

でも、しっかりと気密シートで包む工法を取れば、アレルギーの不安も限りなくゼロに近くなるんです。


京都で選ぶなら「気候・予算・将来性」のバランスで

僕たちが自然素材系を提案するのは、

  • 空気に強いこだわりがある
  • 子どものアレルギーや化学物質過敏が明確にある
  • 十分な予算がある場合

一方で高性能系を提案するのは、

  • 断熱性能を確実に確保したい
  • 湿気や結露対策を第一に考えている
  • 限られた予算で家全体をしっかり整えたい場合

特に京都のように**「湿気が多く、寒暖差が大きく、壁が解体しにくい家」が多い**地域では、
高性能グラスウール+気密シートの組み合わせが最も現実的なんです。

第3章|“素材”より“納まり”で差がつく|断熱材選びの落とし穴

断熱材を選ぶとき、多くの人が**「何を使うか」に注目します**。
でも、僕たちが現場で一番重要視しているのは、
**「それがどう納まるか=どう施工できるか」**です。

なぜなら、どんなに高性能な断熱材でも、納まりが悪ければ意味がないから。


よくある“素材優先”の失敗例

ケース①:セルロースファイバーを選んだけど…

  • 吹き込みの施工業者が限られていた
  • 下地が複雑で、均一に充填できなかった
  • 結局、空洞ができて断熱ムラが生じた

ケース②:硬質ウレタンを壁に吹いたけど…

  • 隙間は埋まったが、気密処理と連動していなかった
  • 配線や配管を後から通しにくくなった
  • 修繕が必要なときに、壁を丸ごと壊すしかなかった

素材がどれだけ優秀でも、納まりが悪ければ“性能は絵に描いた餅”になるのです。


僕たちが断熱施工で一番に考えるのは「現場対応力」

現場は図面通りに進まない。
解体したら土壁が出てきた、柱が傾いていた、思ったより壁が薄かった――そんなことは日常茶飯事。

だからこそ、僕たちはこんな基準で断熱材を選んでいます:

  • 柔軟に対応できるか?(施工性)
  • 部分施工でも効果が出せるか?(断熱の連続性)
  • 将来の点検・メンテが可能か?(維持管理性)

その点で言えば、高性能グラスウールのカット性・充填性・補修のしやすさは抜群
「納まりの柔軟性があるからこそ、性能が生きる」んです。


「断熱=断熱材」ではない。施工こそが断熱の要

断熱性能は、材料の力ではなく**“丁寧な施工による完成度”で決まる**。
どんなにいい素材を使っても、隙間があれば熱も湿気も漏れます。

  • 柱まわりの気流止め
  • サッシまわりの気密処理
  • 天井・床との連続性確保
  • 換気設備との設計連携

これらが整って初めて、素材の性能が“本物の快適性”になる。
だから僕たちはいつも言います。
**「断熱材を選ぶ前に、納まりと施工の話をしよう」**と。

第4章|“壁に入れたら終わり”じゃない|メンテと将来性も素材で変わる

断熱材は「壁に詰めたら終わり」と思われがちですが、
実はその後の“暮らしと維持管理”にも大きく関わる要素なんです。

なぜなら、家は年々、湿気や空気の動き、温度変化に晒され続けるから。
素材の耐久性や、交換・点検のしやすさが、10年後・20年後の“快適性”を決めるんです。


断熱材の劣化って、どう起きるの?

以下のようなリスクが、徐々に断熱性能を低下させていきます:

  • 壁内結露による断熱材の濡れ・ヘタリ
  • 虫や小動物によるかじり・巣作り
  • 構造のゆがみで隙間が発生する
  • 長期使用による素材の沈下・偏り

これらに対して、“どんな素材を選んだか”“どう納めたか”で、
将来の修繕性やリカバリーコストが大きく変わるんです。


自然素材系 vs 高性能系|メンテナンス性の違い

自然素材系(セルロースファイバー・羊毛など)

  • 湿気を調整できる→内部結露に強い
  • ただし水濡れ後の復旧が非常に大変(乾燥・交換不可)
  • 吹き込み式は一部交換が困難で、基本的に“やり直し”

高性能系(高性能グラスウールなど)

  • 湿気対策と気密ができていれば、劣化リスクは低い
  • 万が一の濡れや劣化も、一部抜いて交換可能
  • 壁を開ける必要が出ても、対応のしやすさが圧倒的

つまり、「直せるかどうか」という視点では、グラスウールは非常に強いんです。


リノベーションでは、「将来メンテも想定して選ぶ」が鉄則

京都のように湿度や結露リスクが高い地域では、
どんなに丁寧に施工しても、“完璧な状態”が何十年も続くとは限りません。

だから僕たちは、断熱材を選ぶときにこう考えます:

  • 10年後、もう一度手を入れるとしたらやりやすいか?
  • 万が一濡れたら、どこまで補修できるか?
  • 維持するために専門業者を呼ばないといけないか?

そして、その問いに応えてくれる素材が、
**高性能グラスウール+気密シートの“後から直せる断熱”**なんです。

第5章|素材選びより空気をどう整えるか|断熱材の本当の価値

「この断熱材は性能が高い」「自然素材だから体にやさしい」
そんな情報は今、インターネット上にあふれています。

でも、僕たちが現場で大切にしているのは──
“どんな素材か”ではなく、“どんな空気になるか”。

つまり、断熱材は“空気をつくる仕掛け”だということです。


性能値よりも“呼吸したくなる空気”を設計する

たとえば、UA値が0.46でも、室内が乾燥しすぎていたら心地よくない。
C値が1.0でも、湿気がこもればカビのリスクは高くなる。

断熱材は、あくまでその空間の一部。
大切なのは、それがどう「空気の質」に寄与するか

空気の質を左右する要素:

  • 熱のコントロール(断熱性能)
  • 湿気の調整(調湿性)
  • 空気の流れ(換気・気密)
  • 素材が持つにおいや肌ざわり(体感)

僕たちが選びたいのは、数字じゃなく、「気持ちいい」と言ってもらえる空気なんです。


“深呼吸したくなる家”は素材の選び方から始まっている

断熱材は見えない部分に入るからこそ、選び方が空気に表れる

  • 肌に近い柔らかさがあるか
  • 空間に湿気をこもらせないか
  • 換気や気密と調和しているか
  • 家族の健康に長く寄り添えるか

僕たちが使う高性能グラスウールも、ただ安くて手に入りやすいからではありません。
しっかりと空気を整える“素材の役割”を果たしてくれるからです。


最後に:断熱材は、快適性を生む“名脇役”である

素材の善し悪しは、「何を使ったか」より「どう使ったか」で決まります
そしてその使い方こそが、暮らしの空気に直結する。

断熱材は、家の見えないところで働く名脇役です。
主役は、そこで暮らすあなたとご家族。
その日々の呼吸が、軽くて、あたたかくて、やわらかいものであってほしい。

だから僕たちは、今日も空気のために、素材を選び、施工を整えています。

▶ 「何を入れるか」ではなく「どう暮らすか」から選ぶ断熱材

素材選びに迷ったときは、空気の質から考えてみるのが正解かもしれません。
まずは、実際に空気が整った住まいを、体感してみてください。

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