京都の町家や古民家は本当に危ないの?|耐震補強の誤解と本質
「京都の町家って地震に弱いって聞いたけど、本当に大丈夫?」
「古民家って補強できるの?」
──そんな不安を持つ方は少なくありません。たしかに、築年数の古い木造住宅には、耐震的に課題がある構造もあります。
でも僕は、“古い=危険”と決めつけてしまうのはもったいないと思っています。
なぜなら、構造を読み解き、丁寧に補強すれば「しなやかに揺れる町家」になり得るからです。
地震に弱いのは町家だけじゃない?|倒壊しやすい家の特徴とは
たとえば、以下のような住宅は町家に限らず倒壊リスクが高くなります:
- 筋交いが少ない、配置バランスが悪い
- 壁量不足で揺れに耐えられない
- 接合部が弱く、揺れの力を逃がせない
- 無筋コンクリートや布基礎など、割れやすい基礎
つまり、倒壊リスクは築年数よりも構造の「整い方」によるというのが本質なんです。
町家の構造は“弱点”より“可能性”に満ちている
実際に京都で町家の耐震診断をしていて感じるのは、以下のような傾向です。
よくある弱点:
- 開口部が多く、耐力壁が少ない
- 土壁は剛性がある反面、崩れると修復が難しい
- 通し柱の接合が緩く、揺れが集中する
- 布基礎でアンカーや鉄筋が不十分
でも──
町家のポテンシャル:
- 通し柱や差し鴨居が“粘り”を生む構造
- 壁を少し足すだけで構造バランスが整いやすい
- 無垢材が多く、再利用性が高い長寿命な素材
つまり、町家は「弱い」のではなく、「適切な補強がされていないだけ」なんです。
町家の耐震補強はどこまで必要?|費用と優先順位の考え方
「町家の耐震補強って、全部やらなきゃ意味がないんですか?」
「限られた予算の中で、何を優先すればいいんでしょう?」
──京都の古民家や町家の耐震リノベーションを考えるとき、必ず出てくるのがこの“どこまでやるべきか”問題です。
僕の答えはシンプルです。
「命を守ることを第一に、その上で“優先順位”を設計する」
この考え方こそが、町家リノベにおける耐震補強の“本質”だと思っています。
耐震リフォームは命を守るための時間稼ぎなんだと僕は考えています。どこまで言っても答えがないものだと思うからです。ただ、確実に命を守るものでないといけない。
そのためには施工者だけでなく、施主側にもしっかりとした目的をつことが求められます。
偉そうなことを言いますが、この双方の認識の一致がないと物事は上手く行きません。もし時間が許すなら僕の考えを知ってください。
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古民家の耐震補強は「全部やる」が正解じゃない
耐震補強と聞くと、「強ければ強いほどいい」というイメージを持つ人も多いと思います。
でも実際は──
- 全体を固めすぎると“揺れの逃げ道”がなくなる
- 一部だけ補強すると“他の箇所に負荷が集中”する
- 補強のために“空間の美しさ”を壊してしまう
つまり、「耐震性=強化量」ではなく、「建物全体のバランスと配慮」が重要なのです。
町家の耐震リノベに必要なのは“戦略的な優先順位”
僕たちが現場で意識しているのは:
- 建物全体の構造バランスを読み解くこと
- 最低限でも命が守れる“耐震ライン”の確保
- 将来の段階的補強も見越した設計
「100点を目指してコストが膨らむ」よりも、“85点で命が守れる設計”をつくることが重要なんです。
町家耐震補強の費用対効果|小さな補強が大きな安心につながる
耐震補強には当然コストがかかります。
でも「予算がないから何もしない」は、もっとも危険な選択です。
少しの工事でも効果が大きい例:
- 1階の壁量を増やす(約100万円でも倒壊リスクを大幅に低減)
- 重い瓦屋根を軽量化(重心が下がり揺れにくくなる)
- 一部に構造用合板を入れる(建物の揺れ方が安定)
「全部やる or やらない」ではなく、**「何から優先して、どう組み立てるか」**が問われる時代なんです。
安心は“数値”ではなく“暮らしの感覚”で決まる
耐震診断では「上部構造評点(構造の強さを数値化したもの)」が使われます。
- 1.0以上:倒壊しにくい
- 0.7〜1.0:一部損傷の可能性あり
- 0.7未満:倒壊のリスクが高い
でも実際に大事なのは──
- 子ども部屋の上に重い屋根があることへの不安
- 夜間の避難動線が確保されているかどうか
- 就寝中に補強されていない壁に接しているか
つまり、安心とは“構造の点数”ではなく“暮らしへの納得感”で決まるものなんです。
壊さずに町家を強くする|京都の耐震リノベーション手法
「耐震補強って、壁を壊したり、柱を入れ替えたりするんですよね……?」
よくそう聞かれます。でも実際には、
“壊さずに補う”方が効果的な場合が多いのが町家や古民家のリノベーションなんです。
なぜなら、京都の町家には、構造以上に**「空気」や「時間」が染み込んでいる空間的価値**があるからです。
町家の構造美を壊さない|“最小限で最大効果”の耐震補強
伝統的な梁や柱、差し鴨居を取り壊してしまうのは、あまりに惜しい。
だから僕たちは、こんな方法を使います:
- 弱点となる接合部をピンポイントで補強
- 抜けや緩みを専用金物で確実に補完
- 土壁は残したまま、裏側に構造パネルを追加
- 板壁の裏に構造用合板を仕込む二重壁の設計
こうすることで、見た目を守りながら、構造だけを強化することができるんです。
床下・屋根裏・壁の中|町家耐震の“見えない補強ポイント”
町家の耐震性は、表から見える壁だけでは決まりません。
むしろ、目に見えないところこそが、構造の核心部なんです。
現場ではこんな作業をしています:
- 小屋裏で梁の剛性や継手の状態を確認・補強
- 床下で束柱のグラつきや基礎の割れをチェック
- 壁の中を探知して、補強が効く位置を特定
このように、町家の構造を“読み解きながら、補っていく”技術こそが、壊さない耐震補強の鍵なんです。
新築ではなくリノベだからこそ必要な“構造の再編集”力
新築は設計図で構造を描きます。
でも町家のリノベは、「今あるものに、どう追加するか」が問われます。
大切なのは:
- 負担をかけずに補強する設計力
- 意匠を壊さずに強さを加える施工力
- 将来のメンテナンスにも配慮する視点
僕たちはこれを、「構造の再編集」と呼んでいます。
文化を壊さず、家族を守り、未来に繋ぐ。
それが、“壊さず強くする”町家耐震リノベの本質なんです。
町家の景観と構造を両立させる|美意識を壊さない耐震リノベの工夫
町家を耐震リノベーションしようとすると、必ずぶつかる“3つの壁”があります。
- 構造補強:安全に暮らすために、耐震性を上げたい
- 景観規制:京都市の厳しい外観ルールを守らなければならない
- 町家の美意識:意匠や空気感は壊したくない
この三重苦をどうまとめるか。
それこそが、町家リノベにおける最大の設計課題なんです。
H3|町家の“空気”を壊さない|構造補強だけで満足しない設計へ
町家の魅力は、「奥行き」「陰影」「素材感」といった空気のような価値。
- 通り庭がつくる“縦の抜け”
- 中庭を介した“光と風のリズム”
- 時を刻んだ木肌の美しさ
これらを無視して、耐震補強だけを優先すると──
たとえ構造的には安全でも、「ただの古い建物」になってしまいます。
京都の景観規制を“守る”ではなく“活かす”発想へ
京都市の景観規制は全国でもトップクラスの厳しさです。
- 屋根勾配や瓦の素材
- 外壁の色や質感
- 格子や開口部のデザイン制限
でも僕は、それを**“町家らしさを守るルール”**と捉えています。
たとえば:
- ガルバリウムではなく焼杉板を使う
- 樹脂サッシではなく木製内窓を組み込む
- 室外機や蓄電池は中庭に隠す設計にする
こうした工夫で、景観と耐震性を両立することは十分可能なんです。「景観 × 構造 × 美意識」を調和させる町家設計術
矛盾するように思えるこの3要素ですが、調和の着地点は必ず見つかります。
たとえば:
- 金物補強を、化粧梁で包み隠す
- 意匠格子の裏に耐力壁を仕込む
- 中庭を使って空調や設備配線を隠す
- 通風設計で熱と湿気を“自然に逃がす”
こういった「空気の通り」や「気配の見せ方」も、京都の町家ならではの知恵なんです。
町家リノベの醍醐味は、機能と美意識と文化を、建築で対話させること。
それが、京都で町家を活かすという設計行為だと僕は考えています。
町家を受け継ぐために耐震補強をする|暮らしと資産を守る“未来への備え”
僕が町家や古民家の耐震補強をおすすめするのは、
単に「安全だから」ではありません。
それは、**この土地で家族が暮らし続けるための“準備”**だからです。
京都の町家は“安全地帯”ではない|だからこそ備えるリノベを
京都も南海トラフ・活断層・内陸直下型など、さまざまな地震リスクがあります。
どんなに美しい家でも、構造が不十分なら──命は守れません。
重要なのは:
- 建物が倒壊しないか?
- 避難までの“時間”が確保できるか?
- 災害後も住み続けられる状態か?
僕たちがつくりたいのは、**絶対に壊れない家ではなく、「暮らしを守り続ける家」**です。
町家の耐震補強は“資産価値を守る投資”でもある
古民家や町家を補強するということは、次の世代に「選ばれる家」にするということ。
- 家族に引き継ぎやすくなる
- 賃貸や宿泊施設としての活用幅が広がる
- 地域の建築文化として残す価値が生まれる
逆に、耐震性の低い町家は「不安物件」として避けられてしまうことも。
だからこそ、補強とは「コスト」ではなく、**“未来への選択肢を増やすための投資”**なんです。
構造を補うことは、「住み継ぐ」という意志のあらわれ
家というのは、建てた瞬間から「維持と更新」が必要になります。
中でも構造に手を入れることは、もっとも本質的なメッセージです。
- この家で、これからも暮らしたいという意思
- 子どもたちに手渡したいという希望
- 町家という文化を次の時代に残したいという祈り
その思いを、「耐震補強」という行動で可視化できる。
それが、僕が信じている**町家リノベーションの“本当の価値”**です。
▶ 京都の町家を未来へ。壊さず、強く、美しく
大切な構造や意匠を残しながら、
命を守る強さと、暮らしの快適さを持たせる。
その両立を叶える設計と施工が、僕たちにはできます。
「壊さない耐震補強」で町家を未来へ──。
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