第1章|「何から始めたらいいの?」という一番多い悩み
「空き家をリノベして住んでみたい」
そう考える人は、年々増えてきています。
けれど、その第一歩を踏み出せないまま時間が過ぎている、そんな人がとても多いんです。
- 物件探しから?
- 設計事務所に相談?
- まずはローンの話?
- リフォーム会社に声をかける?
情報が散らばりすぎていて、最初の一手が見えない。
これは僕たちのところに相談に来られる方、ほぼ全員が口にする悩みです。
住宅購入とは“流れが整っているもの”と思われがち
新築や建売なら、流れはだいたい決まっています。
物件を見て、資金計画をして、申込・契約・引き渡し。
でも空き家リノベの場合、その流れがバラバラ。
- 物件は不動産会社
- 工事は工務店
- 設計は建築士
- 融資や補助金は行政や銀行
これらが「横につながっていない」ことで、
誰に、何を、どの順番で頼めばいいのかが曖昧になるんです。
本当のスタート地点は、“空気の状態”を見ること
僕たちキノスミカでは、こう考えています。
リノベの最初の一歩は、「この家は呼吸できるか?」を確かめること。
つまり、構造でも間取りでもなく、
空気の通り方を確認することこそが出発点です。
- 床下から湿気が上がってきていないか?
- 窓の位置と開き方で、風がどう抜けるか?
- 内装の素材が湿気や匂いを溜め込んでいないか?
それらを見ていくと、“住める空き家”と“整えられる空き家”が明確に分かれてくる。
そしてこれは、設計者や不動産屋ではなく、
**暮らす本人が“感じて判断できること”**なんです。
リノベーションは「空気を整える行為」から始まる
- デザインを考える前に、空気のルートを描く
- 断熱を入れる前に、風の入口と出口を確認する
- 設備を整える前に、床下と天井裏に触れてみる
それらはすべて、「整える」ための下ごしらえ。
その下ごしらえを間違えると、いくらお金をかけても**“呼吸できない家”**になってしまう。
だからこそ、最初に確認してほしいんです。
「この家、ちゃんと空気が流れてるかな?」って。
第2章|物件選びの“目利き”がリノベ成功の半分を決める
「どの家を選ぶか」で、リノベの8割は決まる。
これは、空き家リノベに関わってきた僕の実感です。
設計や施工はもちろん大切です。
でも、そもそも**“整えやすい家”を選ぶかどうか**で、
その後にかかる手間もコストも、暮らしの質も大きく変わってきます。
見た目や築年数より、“空気が通っているか”を見てほしい
築50年でも、きちんと風が抜けていれば、構造も健全なことが多いです。
逆に、築20年でも風通しが悪く、湿気がこもっていれば、家はすでに“傷んでいる”。
僕たちが現地で真っ先に見るポイント
- 床下の湿気と換気口の状態
→ 土台が乾いていれば再利用できる
→ 換気が足りなければ後付で改善可能 - 窓の配置と開閉方向
→ 隣家との距離が空いていれば、風は設計できる
→ 高低差のある窓配置なら、上下通風が見込める - 天井裏の通気と梁の状態
→ 通気が取れているか/カビ臭くないか
→ 梁のたわみや腐朽がなければ、構造は残せる
こうした判断は、「家に住む資格があるか?」を見るのではなく、
“この家がまだ呼吸できるか”を確かめる作業です。
「間取りが気に入らない」家でも、整えられることは多い
「部屋数が足りない」「キッチンが狭い」「収納がない」——
たしかにそれは不便です。
でも、間取りは変えられる。
一方で、空気がこもる家は、間取りを変えても暮らしづらさが残る。
だから、こう考えてください。
- 「直せるところ」より、「整えて活かせるところ」を探す
- 外装より、空気の流れに注目する
- 壊すより、読み直す視点を持つ
空き家選びは、“性能チェック”ではありません。
“呼吸の余白があるかどうか”を感じる作業なんです。
第3章|間取りやデザインの前に「空気の器」を設計する
空き家をリノベーションするとき、多くの人が最初に気にするのは「間取り」や「デザイン」です。
「キッチンを対面にしたい」「明るいリビングにしたい」「収納を増やしたい」——
その気持ちはとてもよくわかります。
でも、僕たちがまず最初に手を入れるのは、“空気の器”としての構造です。
空気が通らない家は、どんなに綺麗にしても住み心地が悪い
過去にこんなケースがありました。
見た目はスタイリッシュで、壁紙も最新。
でも、住みはじめてすぐに「なんとなく息苦しい」「空気が重い」と相談された。
調べてみると、窓が多すぎて風が分散し、換気経路が成立していなかった。
つまり、“空気の設計”がされていなかったんです。
設計の最初に考えるのは、空気の「入口」と「出口」
僕たちの設計では、最初に図面上で**「風の道筋」**を描きます。
- 向かい合う窓で風が“抜ける”ラインがつくれるか
- 上下の開口(1階と2階)で“縦通気”が可能か
- 床下の空気がどこから入り、どこへ抜けるか
さらに、機械換気(第3種 or 熱交換型)との連携設計も行います。
吸排気のバランスが取れていなければ、どんな高性能設備も効果を発揮しません。
空気が整えば、間取りも暮らし方に合わせて“のびる”
空気の通り道が設計されると、
それに合わせて暮らしのリズムが自然に整っていきます。
- 日当たりのよい場所に朝のスペースをつくる
- 風が流れる廊下に読書スペースを配置する
- 湿気がこもりにくい部屋を寝室に選ぶ
空気が動くと、家の“静けさ”や“やわらかさ”が変わります。
それが、「深呼吸したくなる家」の土台になるんです。
第4章|相談・設計・工事の流れを整えるための段取り術
空き家リノベーションに興味を持っても、
「誰に、いつ、何を相談すればいいのか」がわからない。
この“段取りの不明瞭さ”が、移住や改修の大きなハードルになっています。
でも安心してください。
正しい順番で進めれば、空き家リノベは決して特別なことではないんです。
ステップ①|最初にやるべきは“構造と空気”のチェック
まだ物件が決まっていない段階でもOKです。
まずは見込み物件の候補をいくつか選び、
施工者・設計者の立場で現地同行できるパートナーに声をかけてください。
現地で見るべきポイント(簡易版チェックリスト)
- 床下の通気と湿気(換気口の数と高さ)
- 屋根裏の通気(天井裏のにおい、カビ)
- 外構と隣家との距離(光と風の導線)
- 間取りと空気の行き止まりがないか
この時点で「壊さず住める家」かどうかの8割が判断できます。
ステップ②|設計の方針を決める前に、“暮らしの希望”を棚卸し
次にやるべきは、デザインや間取りの要望を並べることではなく、
暮らしの中で「何を整えたいのか」を明確にすること。
- 冬の寒さ/湿気/におい
- 家族構成の変化(子ども部屋/書斎/来客)
- 音の問題(静けさが必要/家族の気配を感じたい)
- 素材や空気に対する感覚(無垢材が好き/化学臭が苦手)
これらが明確になることで、
空気・素材・間取りすべての優先順位が自然と見えてきます。
ステップ③|資金計画とスケジュールを“工事から逆算”する
補助金やローンの相談は、設計方針がある程度固まってからがベストです。
なぜなら、空き家の工事は「不確定要素が多い」から。
- 解体してみてからわかる腐朽箇所
- 隠れていた構造が想定外の仕様だった
- 設備の引き込みが現行基準に合っていない
こうした“あと出しの変数”を踏まえると、
初期見積りより10〜20%の余白を持たせた予算設計が現実的です。
最も大切なのは、“話しやすい施工者”と早くつながること
このステップの中で、実は一番大きいのがここです。
「この人に話してみよう」と思える施工者・設計者に出会えるかどうか。
なぜなら、空き家リノベには「正解」がないから。
信頼できるパートナーがいれば、わからないことは順番に一緒に整えていけます。
まとめ|整えることは、住まいに“新しい呼吸”を入れること
空き家をリノベーションする。
それは単に古い家を綺麗にすることではなく、
**“家に再び呼吸を与えること”**だと、僕たちは考えています。
空き家は「完成された箱」ではなく、「未完成の器」
- 間取りは自由に描き直せる
- 素材は選び直すことができる
- 空気の流れも、ゼロから設計し直せる
でも一番大切なのは、“住む人の呼吸と家の呼吸が合うかどうか”。
そのために必要なのが、最初の“見極め”と、丁寧な“整え”です。
正解のないプロセスにこそ、整える価値がある
新築のように完成図があるわけではなく、
設計や施工の段階で次々に現れる“問い”に向き合うのが空き家リノベ。
- この壁、残せるかな?
- この部屋、どう活かせる?
- この匂いの正体、どこから来てる?
そうしたひとつひとつに向き合う過程が、
**“自分たちの暮らしを整えていく時間”**になります。
僕たちは、「深呼吸したくなる家」づくりの最初の一歩を、一緒に歩みたい
どんなに古くても、空気が巡る家は、暮らしやすくなります。
どんなに狭くても、素材が呼吸すれば、心地よさが生まれます。
はじめの一歩は、物件の購入でも、間取りの検討でもありません。
それは、「この家は呼吸できるか?」を確かめることから。
キノスミカは、その感覚を大切にする設計と施工を、
これからも丁寧に届けていきたいと思っています。
▶ 「空き家、どう動き出せばいい?」という方へ。
リノベーションの最初の一歩は、「図面」より「空気」を見ることから。
キノスミカでは、壊すより“整える”選択を大切にしています。
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