中古リノベーションを考える

京都で空き家をリノベーションする前に考えるべき5つの視点

  1. 「壊す」ではなく「暮らしやすく改善する」時代へ──空き家の価値観が変わってきている
    1. 「安い」「広い」だけじゃない、“改善する”という考え
    2. 京都の空き家が持つ「整えがい」という魅力
    3. 僕たちが見ているのは、「新しさ」ではなく「余白」
  2. 移住・暮らしの転機にこそ、空き家が向いている理由
    1. 空き家リノベーションは「未完成を楽しめる」移住者に向いている
    2. リノベーションで空き家に求めるのは、“スペック”ではなく住みやすさ
    3. 「暮らしながらつくりあげる」という自由さ
  3. コストを抑えるなら、「安く買う」より「リノベーションが成立するか」を見極める
    1. 壊す部分が多いと、すぐに数百万円が消えていく
    2. 「暮らしやすい家」には、共通の特徴がある
    3. 本当にコストを抑えるのは、「設計段階の判断」
  4. 見るべきは“劣化”ではなく、“遊べる余白”
    1. 劣化は「終わり」ではなく、「読み直しのサイン」
    2. “リノベーションが成立する家”には、物理的な条件がある
    3. “壊すかどうか”より、“どう育てていけるか”
  5. 整えることで「深呼吸したくなる家」へ
    1. 深呼吸したくなる家には、共通の設計思想がある
    2. 空き家は、「家の呼吸を取り戻す」チャンスでもある
    3. キノスミカの願いは、「住まいと暮らしの呼吸が合う」こと
  6. まとめ|空き家にあるのは、「壊す理由」ではなく「余白」
  7. ✅ 関連記事リンク
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    4. note|現場の言葉と想いを、より深く綴っています

「壊す」ではなく「暮らしやすく改善する」時代へ──空き家の価値観が変わってきている

かつて、「空き家=老朽化=壊すしかない」という価値観が、常識のように流通していました。
不動産としての価値も低く、築年数が古いほど“負債”のように扱われることさえありました。

でも今、空き家は「整えて住む」ものへと価値転換が進んでいると僕は感じています。

「安い」「広い」だけじゃない、“改善する”という考え

京都で増え続ける空き家は、たしかに価格の面で魅力があります。
物件価格が500万円以下の家も珍しくなく、
「この家がこの値段で買えるの?」と驚かれることも多い。

けれどその安さの裏にあるのは、手つかずの空気、整えられていない時間、そして未完成の余白です。
僕たちが目指すのは、その余白をどう住まいとして再構築していけるかという問い。

空き家を選ぶとは、単なるコストメリットではなく、暮らしを自分の手で“整えていく”選択だと僕は考えています。

京都の空き家が持つ「整えがい」という魅力

京都には、間口が狭く奥行きの深い町家や、戦後すぐに建てられた簡易構造の住宅が多く残っています。
構造上の制限も多く、現代の建築基準に合わせるのが難しいものもあります。

けれど、そうした家にこそ、壊さずに活かせる可能性が残されている。

  • 湿気が溜まりがちな床下を改善する
  • 風の抜けない間取りに空気の通り道を設ける
  • 天井裏に溜まった重い空気を軽やかに整える
  • 無垢材や漆喰が再び呼吸し始める空間を取り戻す

これらの工夫ひとつひとつが、空き家に「呼吸」を戻すことにつながっていきます。

僕たちが見ているのは、「新しさ」ではなく「余白」

住宅業界では、スペックや新しさ、設備の最新性が語られることが多い。
でも僕たちキノスミカが見ているのは、その家に“整えられる余白”があるかどうかです。

  • 風は通るか?
  • 素材は呼吸できるか?
  • 間取りは読み替えられるか?
  • 住む人の呼吸と、家の呼吸が合いそうか?

それを感じられる空き家は、たとえ古くても“住まいの器”として、
もう一度息を吹き返す可能性を持っているのです。

移住・暮らしの転機にこそ、空き家が向いている理由

「京都で暮らしてみたい」
「もっと静かな環境で子育てしたい」
「仕事を見直したい。自分の時間を取り戻したい」

そう思って移住や転居を検討する方が、ここ数年とても増えています。
でも、いざ物件を探し始めると、こんな悩みに直面するんです。

  • 「予算内で買える家がない」
  • 「新築は立地が希望と合わない」
  • 「賃貸では自分らしく住めない」

そこで選択肢に浮かぶのが「空き家」。
でもそのとき、こう思うのではないでしょうか?

“古くて不安”…
“どこから手をつければいいの?”
“快適に暮らせるのかな…”

空き家リノベーションは「未完成を楽しめる」移住者に向いている

移住とは、「今ある暮らしを手放す」行為。
だからこそ、すべてが整っている必要はありません。
むしろ、整えていける余白があるからこそ、自分たちの暮らしを編み込めるのです。

空き家には、完成された設備も間取りもありません。
だからこそ――

  • 壁の色を塗り替える
  • 空気が流れるように窓を開け直す
  • 古い柱をそのまま“芯”として活かす

そうした行為すべてが、**「自分の暮らしをつくる実感」**に変わっていきます。

リノベーションで空き家に求めるのは、“スペック”ではなく住みやすさ

新築や築浅物件は、確かに設備や性能は優れています。
でも多くの移住者が感じているのは、「どこか自分の暮らしが入り込めない」という息苦しさ。

それはおそらく、空気が流れていないから。
物理的にも、心理的にも。

  • 朝、庭に出たくなる空気の軽さ
  • 音がやわらかく響く静けさ
  • 季節の変化が感じられる室温のゆらぎ

これらは、空き家のもつ「素材」「構造」「風の抜け方」すべてが合わさって生まれるもの。
移住を考えるとき、“この家は呼吸できているか?”という感覚は、とても大切な判断基準になります。

「暮らしながらつくりあげる」という自由さ

整える家は、常に“未完成”です。
でもそれは、「ずっと不完全」という意味ではありません。
暮らしに合わせて、更新し続けられる家ということ。

  • 子どもが成長したら、間仕切りを足す
  • 趣味が変われば、部屋の用途を変える
  • 季節に合わせて、風の通り道を調整する

この柔軟性は、すでに完成された家にはない、整える暮らしだけの特権です。

コストを抑えるなら、「安く買う」より「リノベーションが成立するか」を見極める

「空き家は安いから、お得」
これはある意味で正しくて、でも同時にとても危うい言葉です。

確かに、物件価格だけを見れば安価なものはたくさんあります。
でも、僕たちが数多くの現場で見てきたのは、**「買ってから思ったより高くついた」**というケース。

原因は単純です。
「壊す量」と「直す手間」の見積もりが甘い。

壊す部分が多いと、すぐに数百万円が消えていく

たとえば、築50年の空き家を買って…

  • 天井を全部剥がす
  • 壁をスケルトンにする
  • 配管を全て引き直す
  • 屋根裏を補強する

これをすると、物件価格が300万円でも、総額2000万円を超えることはよくあります。

逆に、整える家は壊さない。

  • 床を剥がさずに重ね張り
  • 壁の一部だけ補修
  • 設備の位置を活かした間取り

残せる構造や空気の流れがある家は、それだけでコストを抑えられるんです。

「暮らしやすい家」には、共通の特徴がある

コストが膨らみにくい家は、初見でもある程度わかります。
僕たちが現地調査で見るのは、次のようなポイントです。

  • 床下の湿気が少なく、換気が効いている
  • 天井裏にカビ臭や結露の兆候がない
  • 風の通り道が既に家にある
  • 設備や間取りに余白がある

これらがそろっていれば、予算の8割は“活かす工事”に使える。
一方で、壊す工事にお金がかかる家は、整える楽しさより“修繕の苦しさ”が先に来てしまう。

本当にコストを抑えるのは、「設計段階の判断」

大切なのは、「買ってから考える」ではなく、
「買う前に読み解く」こと。

  • どこを残して活かせるか
  • どこを直せば空気が流れ出すか
  • どこまでならDIYで手が届くか

この判断ができると、
素材やデザインに予算を回す余裕も生まれ、結果として満足度の高い家になる。

コストを抑える鍵は、「価格の安さ」ではなく「整える知性」なのです。

見るべきは“劣化”ではなく、“遊べる余白”

空き家を見るとき、多くの人がまず探すのは「劣化ポイント」です。

  • 床が沈んでないか?
  • 壁にヒビがないか?
  • 雨漏りしていないか?
  • シロアリは?カビは?

もちろん、どれも重要な確認項目です。
でもそれだけでは、“壊すべきかどうか”の判断にしかなりません。

僕たちが空き家を見るときに考えるのは、それとは逆です。

「この家は、どこが活かせるだろう?」
「この空間には、どんな風が通せるだろう?」

つまり、“遊べる余白”があるかどうかを探しているんです。

劣化は「終わり」ではなく、「読み直しのサイン」

たとえば、壁にシミがあるとします。
それは確かに劣化のサインですが、“水がここに集まりやすい構造”の証拠でもある。

  • 雨仕舞いが悪いなら、屋根の角度を見直す
  • 通気が足りないなら、風の入口を増やす
  • 結露なら、断熱と気流止めを検討する

これらはすべて、“読み直し”によって改善できる余地なんです。

古さを見つけて判断を止めるのではなく、
「この不具合の裏に、どう整える道があるか?」と問い続けることが、僕たちの視点です。

“リノベーションが成立する家”には、物理的な条件がある

整えられる空き家は、感覚だけで判断するものではありません。
しっかりとした技術的・構造的な根拠があります。

僕たちが見る具体的なポイント:

観点着眼点解釈すべきサイン
床下換気の通り・湿気のこもり方土台が乾いている=再生可能性が高い
天井裏断熱材の有無・カビの匂い空気層の再設計ができるかどうか
開口部窓の位置・風の動線換気計画と通風の設計余地があるか
壁構造柱の位置・抜ける壁の判定間取り再構成がしやすいかどうか

こうした条件が整っている家は、「整える設計」へとスムーズに移行できるんです。

“壊すかどうか”より、“どう育てていけるか”

僕たちは空き家を見るとき、
「ここを壊しましょう」と簡単には言いません。

それよりも、

  • この素材、残したら味が出るかも
  • この風の道、少し工夫すればもっと伸びる
  • この床の音、整えすぎない方が落ち着く

そんなふうに、“家との対話”を大切にしています。

整えられる余白がある家は、暮らしの中でどんどん育っていきます。
それは、素材の経年変化だけではなく、
住む人と家が一緒に呼吸し続けられるかどうか、という関係性の話でもあるんです。

整えることで「深呼吸したくなる家」へ

整えるという行為は、ただのリノベーションではありません。
それは、住まいにもう一度“呼吸”を取り戻すことです。

空き家のリノベーションで僕たちがもっとも大切にしているのは、
「完成された機能やデザインを目指すこと」ではなく、
“空気が動き、素材が呼吸できる状態を整えること”。

深呼吸したくなる家には、共通の設計思想がある

どれだけ自然素材を使っても、
どれだけ性能値が高くても、
空気が滞れば、それは“閉じた家”です。

深呼吸できる家は、こんな状態に整っています:

  • 風の入口と出口が設計されている
  • 素材が呼吸し、湿気や匂いがこもらない
  • 温度だけでなく、空気の質が快適
  • 静けさの中に、風や光がさりげなく通る

これは設備で作るのではなく、
設計と読み取りによって「整える」ことではじめて実現できるんです。

空き家は、「家の呼吸を取り戻す」チャンスでもある

新築住宅では実現しにくい“深呼吸する家”を、
空き家だからこそつくれる。

なぜならそこには…

  • 無垢の柱があり
  • 窓の高さにばらつきがあり
  • 壁の厚みや床の響きに個性がある

それらが、“均質ではない家”を形づくっている。
そして、そこに風を通し、湿気を逃がし、音や光が巡るように整えたとき、
その家は再び、暮らしの器として息をし始める。

キノスミカの願いは、「住まいと暮らしの呼吸が合う」こと

僕たちが空き家の再生を手がけるとき、
常に考えているのは、**“この家が住む人と調和できるか”**ということです。

  • その人が深呼吸したくなる瞬間を、家が支えられるか
  • 四季のうつろいを、空気で感じられるか
  • 住まいの中に、余白としての静けさが残せるか

それが整ったとき、ようやく家は「居場所」として完成するのだと思います。

まとめ|空き家にあるのは、「壊す理由」ではなく「余白」

壊すことは、簡単です。
でも、リノベーションし残すことには、“時間と空気を受け継ぐ美しさ”がある。

空き家には、まだ呼吸の余地があります。
そしてそれは、住む人がいて初めて“家の呼吸”になる。

キノスミカは、そうした呼吸を一緒に探し、
整えることから始まる豊かさを、ひとつずつカタチにしていきたいと考えています。

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