築古住宅でも断熱性能は上がるのか?自然素材と両立させる設計術

中古リノベ
  1. 第1章|古い家の断熱って“どうせ無理”と思ってませんか?
    1. 断熱リノベは「できない前提」で話されることが多い
    2. そもそも、なぜ古い家は寒いのか?
    3. 断熱性能は新築じゃないと上げられない…は誤解
    4. 次は「どうすればできるか」を具体的に
  2. 第2章|築30年オーバーでも断熱改修は可能です|3つの条件
    1. 古い家の断熱改修に必要なのは「全面リフォーム」ではない
    2. 条件①|構造体(柱・梁・土台)がしっかりしている
    3. 条件②|“熱の出入り口”を押さえることができる構造である
    4. 条件③|「空気の流れ」が設計できる余地があること
    5. 「全部やらないと意味がない」ではなく「要所を押さえれば十分」
    6. 次は、「熱の抜け道」をどう読むか
  3. 第3章|断熱材だけじゃダメ?僕が絶対に見る“熱の抜け道”
    1. 断熱材は“万能の答え”じゃない
    2. 僕が現地調査で最初に見る場所
    3. 家は“部分最適”では快適にならない
    4. 熱は「隙間」よりも「流れ道」を通る
    5. 自然素材との相性を決める“基礎工事以上の基礎”
    6. 次は「断熱と素材は両立するのか?」という問いへ
  4. 第4章|素材と断熱、どう共存させる?
    1. 「自然素材か断熱性能か」の二択じゃない
    2. 素材は「温熱性能」ではなく「温熱体感」に働きかける
    3. 共存のために必要なのは、「順番」と「役割分担」
    4. 僕がよく使う「断熱 × 素材」実装例
    5. 暖かさとは、数字だけじゃなく“信号の質”でもある
    6. 次は実例へ|性能と素材が共存した空間の“空気の変化”
  5. 第5章|リノベで温熱環境が変わった実例紹介
    1. リノベで「家の空気が変わる」ってどういうこと?
    2. 実例|築37年の木造住宅で感じた“空気の変化”
    3. 冷気がなくなっただけじゃない。感情のリズムも変わる
    4. 高性能グラスウール×気密シートの“あと施工”でも十分変わる
    5. 自然素材の“効果”が引き立つのは、断熱が整ってから
    6. 次は「これからの50年に耐える断熱設計」へ
  6. 第6章|「これからの50年に耐える断熱」の考え方
    1. 今の快適さより、「時間に耐える断熱」を考える
    2. 断熱性能は、時間とともに落ちる。だからこそ“構成”が大事
    3. 「気密」は快適性と素材保護の両立ポイント
    4. 外側からの変化、内側からの変化にどう備えるか
    5. 自然素材が“ずっと心地いい”ために
    6. 次はまとめ|性能も、素材も、あきらめないために
  7. 最終章|まとめ|性能も、素材も、あきらめないために
    1. 「自然素材は好きだけど、暖かさはあきらめるしかない」
    2. あなたが好きな空気感を、あきらめなくていい
    3. 「古い家を選んだら、あとは我慢するだけ」じゃなくていい
    4. 最後に、一つだけお聞きします。
    5. ▶ 「素材も、性能も」叶えた家、見てみませんか?
    6. ▶ 「こんなこと聞いていいのかな?」からはじめて大丈夫です。

第1章|古い家の断熱って“どうせ無理”と思ってませんか?

断熱リノベは「できない前提」で話されることが多い

「築40年の家に住んでるんですけど、やっぱり冬はあきらめた方がいいですよね…?」

これは、僕がリノベの相談を受けるときによく言われる言葉のひとつです。
そしてその後には、たいていこう続きます。

「自然素材に憧れてるけど、断熱はどうせ無理だから…」
「古い家だし、暖かくなんてならないでしょ?」

正直に言います。その“思い込み”、もったいないです。

僕はこれまで、築30〜50年の家を何棟もリノベしてきました。
そしてその多くで、「冬も靴下いらなくなりました」
「朝起きるのがつらくない家になりました」と言っていただいています。

築古でも、断熱性能は上げられる。ちゃんと戦略を立てれば、です。

そもそも、なぜ古い家は寒いのか?

日本の住宅は、長らく「断熱性能」が軽視されてきました。
特に1980年代以前の住宅では、こんな特徴があります。

  • 無断熱 or グラスウール薄張り
  • 単板ガラスサッシ(アルミ)
  • 壁・天井・床すべてに隙間あり
  • 換気=“自然まかせ”

結果、冬は冷気が入り放題。暖房してもすぐ逃げる。
「寒いのが当たり前」の家が日本中に存在しています。

でもそれは、単に「そういう時代だった」だけの話。
今の技術と視点があれば、“寒さの構造”は逆転できます。

断熱性能は新築じゃないと上げられない…は誤解

大事なのは、「どこから手をつけるか」「どこまでやるか」の戦略です。

新築のようにゼロから作るわけではないので、
“全部完璧に”を目指すとコストが跳ね上がりますし、現実的じゃありません。

でも、「熱が一番逃げているところ」に絞って、
「既存の構造を活かしながら手を入れる」方法をとれば、
体感温度を大きく変えることは十分可能なんです。

僕の感覚でいえば、築30〜40年の木造住宅であれば、
正しく断熱改修すれば「新築にかなり近い快適さ」を実現できます。

そしてその上で、無垢材や漆喰といった自然素材を組み合わせることで、
ただ“暖かい”だけじゃない、身体にも心にも優しい空間が生まれる。

次は「どうすればできるか」を具体的に

では次は、築古住宅で断熱改修を成功させるための「3つの条件」について、
現場の視点から具体的に解説していきます。

第2章|築30年オーバーでも断熱改修は可能です|3つの条件

古い家の断熱改修に必要なのは「全面リフォーム」ではない

「断熱改修をするなら、壁も床も全部壊して、一からやり直さないと無理ですよね?」
そんなふうに思っている方は多いかもしれません。

でも実際は、その家の“構造と状態”を正しく見極めれば、全解体しなくても断熱性能は上げられます。
新築レベルとまではいかなくても、寒さのストレスが大幅に軽減される状態には十分できます。

僕がこれまで手がけてきた築古住宅のリノベで、
断熱改修が「うまくいった」と言える家には、共通点があります。

それは、大きくこの3つの条件が揃っていたことです。

条件①|構造体(柱・梁・土台)がしっかりしている

断熱材を入れても、それを支える構造が傷んでいたら意味がありません。

築30年を超える木造住宅の場合、まず確認するのはここです。

  • 土台が腐っていないか
  • シロアリ被害の形跡がないか
  • 梁が傾いていないか
  • 雨漏りによる腐朽が進んでいないか

特に床下の湿気や、北側壁面の状態は注意が必要です。
ここに問題がない場合、「壊さずに断熱材を追加・補強できる」可能性が広がります。

条件②|“熱の出入り口”を押さえることができる構造である

断熱で一番効くのは、「全体」ではなく「ポイント」です。

  • 窓(開口部)からの熱損失:約50%
  • 床や屋根からの放熱:約30%
  • 壁全体からの放熱:約20%

つまり、すべてを壊すのではなく、
窓サッシを断熱仕様に変えたり、床下に高性能断熱材を入れるだけでも、快適性は大きく向上する。

内窓(インナーサッシ)の追加や、断熱ブラインドの設置といった“部分リノベ”でも、
しっかり設計すれば「体感温度が2〜3℃変わる」レベルの成果が得られます。

条件③|「空気の流れ」が設計できる余地があること

断熱性能は“封じること”と誤解されがちですが、
実際は「空気の流れをコントロールする設計」が重要です。

特に築古住宅では、隙間だらけの気密性の低さが問題視されますが、
この“すきま風”を逆手に取って**「風の道」として活かす設計」も可能です。

  • 換気が効きやすい家か
  • 冬場の結露が発生しにくい構造か
  • 暖気が天井裏にこもらないか
  • 吹き抜けや階段の動線と空気の関係

こうした視点を持つことで、「閉じるだけ」ではない断熱の仕組みがつくれるんです。

「全部やらないと意味がない」ではなく「要所を押さえれば十分」

僕の経験上、断熱改修で“失敗するケース”の多くは、
全体に手をつけすぎて予算が足りなくなり、肝心な部分が手薄になるパターンです。

逆に、「ここは熱が逃げやすい」「ここを押さえれば効く」というポイントを絞ることで、
性能とコストのバランスを取ることができます。

大事なのは、「どこをやるか」ではなく、
「どこを優先してやるべきか」をプロと一緒に見極めること。

次は、「熱の抜け道」をどう読むか

次章では、僕が実際に現場で“絶対に見るポイント”としている、
「熱の通り道」と「家の構造のクセ」についてお話しします。

それが分かると、「自分の家のどこから手をつければいいか?」が一気に明確になります。

第3章|断熱材だけじゃダメ?僕が絶対に見る“熱の抜け道”

断熱材は“万能の答え”じゃない

断熱リノベというと、「グラスウールを入れましょう」「吹き付け断熱を使いましょう」といった話がすぐに出てきます。

もちろん、断熱材は大切です。
けれど、それだけでは**「暖かい家」にはなりません。**

実際に僕が現場で見てきた中で、
断熱材をしっかり入れているのに「なぜか寒い」家もたくさんありました。

その原因は、“熱が抜けている場所”が、断熱材でカバーしきれていないことにあるんです。

僕が現地調査で最初に見る場所

断熱の効果を高めるために、僕が必ず確認する場所がいくつかあります。

  1. 玄関ドア・勝手口ドアの隙間や構造
     ここからの冷気侵入は意外と大きい。アルミ製・単板ガラスは要注意。
  2. 窓上と床下の取り合い(気流止めの有無)
     古い家には、気流止めが入っていないケースがほとんど。
     断熱材を入れても、空気が通り抜けていたら意味がない。
  3. 天井裏の断熱状況と“逃げ道”
     天井から熱が抜けていくのは想像しやすいですが、
     「どこに逃げていくか」のルートが設計されていないと、室温が安定しません。
  4. 押入れ・階段下・収納の“死角エリア”
     家の中で断熱が手つかずになりがちなのがこの辺り。
     このゾーンの冷えが、リビングや寝室にじわじわ影響してくるんです。

家は“部分最適”では快適にならない

断熱リノベの落とし穴は、「入れた場所は暖かいけど、家全体では快適にならない」という状態です。

たとえば、
リビングは暖かいけど廊下に出た瞬間に足が冷える。
トイレや洗面所の床が冷たすぎて、朝の支度がつらい。

これでは、暮らし全体の質は上がりません。
だから僕は、断熱材よりも先に「熱がどこを通るか?」を読みにいく。

熱は「隙間」よりも「流れ道」を通る

断熱の弱点は、穴ではなく“ルート”です。

たとえば、屋根裏から小屋裏へ抜ける通気経路。
玄関脇から床下までつながる空間の“抜け”。
梁と壁の間にある、隙間ではないけれど空気が動くゾーン。

これらは、図面だけでは見えてきません。
現地で、空気の流れと熱の動きを想像しながら、「家の呼吸経路」を読み取っていくんです。

自然素材との相性を決める“基礎工事以上の基礎”

ここが整っていないと、いくら漆喰を塗っても、杉の床を張っても、
「寒いから結局ストーブを焚きっぱなし」
「足元だけ冷えて冷え性がつらい」といった事態になってしまいます。

断熱材の性能を活かすには、“熱がどう逃げようとするか”を先に読むこと。

これは僕にとって、**素材を選ぶ前に行う設計の“基礎工事以上の基礎”**です。

次は「断熱と素材は両立するのか?」という問いへ

ではここから、読者の多くが感じている疑問に向き合いましょう。
「断熱をしっかりやる家」と「自然素材で整える家」って、両立するの?

次章では、僕が実際に設計でやっている“両立のコツ”と注意点をお話しします。

第4章|素材と断熱、どう共存させる?

「自然素材か断熱性能か」の二択じゃない

「漆喰って断熱性能ないですよね?」
「無垢材ってあたたかそうだけど、断熱材ほど効果あるわけじゃないですよね?」

そんな質問を受けることがあります。
確かに、断熱材のような“熱抵抗値”を持つ素材とは違い、
自然素材は「断熱材」としての性能には限界があります。

でも、だからといって**“自然素材を使う=断熱性能を犠牲にする”**というのは誤解です。

僕がこれまで設計してきた中では、
**自然素材と断熱性能は「反発し合うもの」ではなく、「補完し合う関係」**だと感じています。

素材は「温熱性能」ではなく「温熱体感」に働きかける

断熱材は、熱を伝えにくくする。
自然素材は、熱を“どう感じるか”を左右する。

たとえば杉の床。
触ったときに「ぬくもり」を感じられるのは、素材自体が低熱伝導率であるうえに、肌触りが柔らかいから。

ビニールフロアやタイルでは味わえない、“足元からの安心感”がある。

漆喰も同様で、断熱材ではないけれど、室内の湿度や壁の冷たさを和らげる役割を果たします。
結果として、同じ室温でも「なんとなく暖かい」「冷えにくい」という“体感の質”が変わるんです。

共存のために必要なのは、「順番」と「役割分担」

断熱と素材を両立させるには、施工順と設計の順番を間違えないことが大事です。

僕が意識しているのは以下の順番です。

  1. まず、断熱性能を確保する(床・壁・天井・窓)
     → 家の骨格としての快適性をつくる。
  2. 次に、自然素材を“肌に触れる位置”に導入する
     → 室温と体感のギャップを整える。
  3. 最後に、素材の呼吸や湿度変化を考慮した空気設計を行う
     → 吸放湿性や熱容量を活かして、1年通して快適に。

断熱材と自然素材の“役割”を分けて考えると、両方が最大限に力を発揮する位置が見えてきます。

僕がよく使う「断熱 × 素材」実装例

  • 杉の床材 × 床下:フェノールフォーム断熱 or 高性能グラスウール
  • 漆喰の壁仕上げ × 内側:高性能グラスウール or 繊維系断熱材
  • 天井は無垢板張り × 屋根断熱:高性能グラスウール or フェノールフォーム断熱

これにより、断熱ラインを確保しながら、室内側には“感覚に働きかける素材”が触れられる構成ができます。

暖かさとは、数字だけじゃなく“信号の質”でもある

人の体は、室温だけでなく**「肌が感じる接触の温度」や「湿度」「空気の動き」**にも反応します。
たとえば漆喰は空気を動かし、湿度を緩やかに調整し、無垢材は“触れたときの違和感”を和らげてくれる。

数字には出ないけれど、心地よさの「総合点」を押し上げてくれる素材たちなんです。

次は実例へ|性能と素材が共存した空間の“空気の変化”

では実際に、断熱改修と自然素材を組み合わせて、
暮らしがどう変わったのか?

次章では、住まい手の言葉で語られた“空気の違い”と、その背景にある設計手法を紹介します。

第5章|リノベで温熱環境が変わった実例紹介

リノベで「家の空気が変わる」ってどういうこと?

断熱改修の提案をすると、「本当にそんなに変わるものなんですか?」とよく聞かれます。

「見えない部分にお金をかけるなんて、もったいなくないですか?」
「床だけ無垢にすれば十分じゃない?」

そんな声に対して、僕はこう答えます。

「空気が変わりますよ」
それは数字の話ではなく、「暮らしの肌感覚」の変化です。

実例|築37年の木造住宅で感じた“空気の変化”

この家は、元々典型的な昭和の間取りでした。1階のみの改修。
南向きに細長く、壁は化粧合板、床は冷たく、冬は石油ファンヒーターが欠かせなかったそうです。

そこで行ったのは、以下の改修です。

  • 床・壁・天井すべてに高性能グラスウール(HGW16K・厚90〜120mm)を充填
  • 気密シートはあと施工し、構造用合板、ボードでしっかり押さえる層構成
  • 窓はすべて内窓(樹脂製)を追加
  • 床は杉の赤身材、壁は漆喰、天井は現しの梁

仕上がってみて、住まい手が最初に言った言葉が忘れられません。

「家の中の空気が止まってる。前はずっと動いてたのに」

冷気がなくなっただけじゃない。感情のリズムも変わる

改修前、このお宅では「冬は廊下に出るのがイヤ」「朝はキッチンが寒いから重装備」といった“防衛的な暮らし”をしていたそうです。

でもリノベ後は、

  • ストーブ1台で家中が暖かい
  • 朝、靴下を履かなくても大丈夫になった
  • 「家が好きになった」と言ってもらえた

ここで強調したいのは、断熱は“温度の問題”だけじゃないということです。
「行動の自由度」「暮らしの感情の動線」まで変えてくれるんです。

高性能グラスウール×気密シートの“あと施工”でも十分変わる

この実例で用いたのは、新築向けの構造一体型断熱ではありません。
既存の構造に合わせて、断熱材を組み込み直します。

しかもグラスウールは、正直なところ“地味な断熱材”です。
けれど、ちゃんと気密シートで層を確保し、柱間に密着させて施工すれば、
性能的には吹付断熱やボード状断熱と遜色ない結果が出
ます。

自然素材の“効果”が引き立つのは、断熱が整ってから

この家でもそうでしたが、無垢の床の柔らかさや、漆喰の呼吸感
住まい手が素直に「気持ちいい」と受け取れるのは、
空気環境が先に整っているから。

断熱のレベルが整えば、自然素材は“飾り”じゃなくて“働く素材”になります。

次は「これからの50年に耐える断熱設計」へ

断熱改修が一度きりで終わるなら、
「今が暖かい」だけで良いかもしれません。

でもリノベは、これからの暮らしを預かる器を作る行為です。
次章では、50年先を見据えて、僕が断熱設計で大切にしている考え方をお話しします。

第6章|「これからの50年に耐える断熱」の考え方

今の快適さより、「時間に耐える断熱」を考える

断熱改修をするとき、「いま暖かいかどうか」ばかりが語られがちです。

でも僕は、その断熱が“30年後も働いているか”を想像するようにしています。

リノベは、単なる一時的な性能向上ではなく、
“その家の未来”を引き受ける仕事だと思っているからです。

断熱性能は、時間とともに落ちる。だからこそ“構成”が大事

断熱材は魔法の素材ではありません。
高性能グラスウールであっても、湿気や沈み込み、施工精度の影響で徐々に劣化していきます。

でもこれは「避けられない劣化」ではないんです。
正しい断熱構成と、素材の“守り方”さえ押さえておけば、性能は長く持続します。

僕が採用している方法の基本は、以下の3点です。

  • 高性能グラスウールを隙間なく柱間に密着施工
  • 内側に気密シートをあと施工し、湿気の侵入を防ぐ
  • 合板などで押さえて、断熱材が垂れないよう保持層をつくる

この3層を守ることで、30年後も“機能している断熱”が維持できる可能性が高まります。

「気密」は快適性と素材保護の両立ポイント

断熱ばかり語られて、忘れられがちなのが“気密”です。

気密を高めることで得られるのは、

  • 外気(花粉・PM2.5)の侵入防止
  • 暖気・冷気のロス軽減
  • 結露・カビの防止
  • 断熱材の劣化予防

つまり、**「気密は断熱のパートナー」**なんです。

僕が気密シートをあと施工するのは、
高気密住宅を目指しているというより、「断熱を守るバリア」としての機能を重視しているからです。

外側からの変化、内側からの変化にどう備えるか

今後、気候がさらに極端化していくことはほぼ確実です。
夏の猛暑、冬の寒波、湿度の乱高下——

そのとき、家がどう応えてくれるかは、
「目に見える素材」ではなく、「構造の奥にある断熱層」の設計にかかっています。

そしてもう一つ忘れてはいけないのが、
住まい手の感覚や暮らし方も“50年のうちに変化していく”ということ。

小さかった子どもが大人になり、
親の世代が寒さに敏感になり、
部屋の使い方が変わる。

そうした変化にも「無理なく順応できる家」は、
断熱・気密の土台がしっかりしている家です。

自然素材が“ずっと心地いい”ために

無垢材も、漆喰も、時間とともに味わいが増す素材です。
でもその美しさが活きるのは、素材が「劣化」ではなく「育つ」環境にあるときだけ。

その環境をつくるのが、**目に見えない“断熱と気密の設計”**なんです。

次はまとめ|性能も、素材も、あきらめないために

ここまでで、築古住宅でも断熱性能を上げることは十分可能だとお伝えしてきました。
では最後に、性能と素材、両方をあきらめない家づくりのために、
僕たち設計者ができること・住まい手ができることを、まとめて締めくくります。

最終章|まとめ|性能も、素材も、あきらめないために

「自然素材は好きだけど、暖かさはあきらめるしかない」

そう思っていた方が、もしいたら。
僕は声を大にして伝えたいです。

あきらめなくて大丈夫です。両方、ちゃんと手に入ります。

これまで僕が設計してきた築古住宅の多くは、
最初は「寒さ」「結露」「古さへの不安」が付きまとっていました。

でも、断熱性能を的確に高めることで、
自然素材の良さはむしろ際立ちました。

・高性能グラスウールで断熱層を整える
・気密シートで湿気の侵入を防ぎ、断熱材を守る
・素材は「飾る」ではなく「触れる場所」に選ぶ

この考え方で設計すれば、
断熱と素材は競合しません。むしろ協力し合います。

あなたが好きな空気感を、あきらめなくていい

無垢の床を踏んだときの柔らかさ
漆喰の壁に包まれた空間の静けさ
冬の朝、素足でキッチンに立てる嬉しさ

その全部は、「素材を選んだ」という事実以上に、
“あなたが大切にしたかった感覚”の証拠です。

僕は、その感覚に応える家を、技術と設計でつくりたい。

「古い家を選んだら、あとは我慢するだけ」じゃなくていい

断熱性能は、あとからでもちゃんと高められます。
素材の心地よさは、あとからでもちゃんと加えられます。

そして、「素材と性能は両立する」だけでなく、
その組み合わせが“暮らしの自由度”を高めてくれる。

家に手をかける意味。
住まいと向き合う喜び。
暮らしの細部が好きになれる幸福感。

そうした“日常の肯定感”こそが、僕たちが届けたいリノベの本質です。

最後に、一つだけお聞きします。

「あなたの家で、大切にしたい空気って、どんな空気ですか?」

その問いへの答えを、一緒に探せるような家づくりを
僕は、これからも続けていきます。

▶ 「素材も、性能も」叶えた家、見てみませんか?

施工事例ページでは、築年数・間取り・断熱仕様・素材の選び方など、
実際の住まい手の選択をご覧いただけます。

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▶ 「こんなこと聞いていいのかな?」からはじめて大丈夫です。

住まいの悩みは、正解よりも「どう感じているか」が大事。
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