1. 「自然素材の家って手がかかるんでしょ?」という誤解
「無垢材って、メンテナンス大変そうですよね?」
これは、初回の打ち合わせでよく言われることの一つです。
確かに、集成材や合板と違って、無垢材は傷もつくし、汚れも染み込む。
漆喰の壁も、うっかり手が触れると跡が残ることもあります。
でも、僕はそれを「欠点」とは思っていません。
むしろ、それこそが自然素材でつくる家の“魅力”だと、実際に何軒もの住まいに関わってきて感じています。
素材に触れることで、家と会話するような暮らしになるんです。
2. 手をかけることで、家が“自分たちのもの”になっていく
素材に少しずつ手をかける。
床にできた傷を「これは子どもが初めて転んだ日だね」と話す。
年に一度、家族でワックスを塗るのを恒例行事にしているご家族もいました。
そんなふうに家と向き合っている人たちは、
「家に手をかけている」というより、
「家と一緒に暮らしてる」という感じなんですよね。
僕も現場に立つ中で、そういうご家族を見るたび、
**“家って、道具じゃなくて生き物かもしれない”**って思うようになりました。
3. 無垢材のメンテナンス|床・壁・天井の基本の「き」
無垢フローリングの掃除と付き合い方
無垢材の床は、実はそんなに難しい手入れは必要ありません。
僕のおすすめは、普段は乾拭きかモップ、時々掃除機。
濡れ雑巾はNGとされることもあるけど、固く絞って使えば問題ありません。
気になる汚れが出たときだけ、中性洗剤を少しだけ。
あとは素材の呼吸を妨げないよう、できるだけ自然のままで。
「掃除」というより、「気づいたら拭いてた」くらいの距離感でちょうどいいです。
ワックスやオイル塗装は“お守り”みたいなもの
無垢材は、塗装の種類によっても手触りや手入れの仕方が変わります。
僕の現場では、自然オイル仕上げや蜜蝋ワックスを使うことが多いです。
これは木の呼吸を活かしながら、最低限の撥水性と艶を出せるから。
塗り直しの頻度は年に1回くらいが目安ですが、
「気になってきたな」と思ったときに軽く塗るくらいで大丈夫です。
作業自体も簡単だし、お子さんと一緒に塗ってるご家庭もありますよ。
「これ、うちの子が塗った床なんです」って、ちょっと誇らしげに話してくれるんです。
傷や凹みは直せる。というか、育つ
無垢材の面白さは、凹んだら直せるところ。
濡れたタオルを当てて、その上からアイロンで熱を入れると、
木の繊維が膨らんで元通りになることも多いんです。
紙やすりで軽く削って、ワックスを塗れば新品みたいに蘇る。
素材が傷つくたびに「もうダメだ」と思うんじゃなくて、
「また一つ思い出ができたな」と思える人に、無垢材の家は向いてるんだと思います。
4. 素材別の付き合い方|杉と桧
杉|やわらかくて傷つきやすい。でも、気持ちいい
杉は、僕が一番よく使う木材です。
足ざわりがとても気持ちよくて、夏でも冬でも素足で歩けます。
ただし、やわらかいので、当然傷はつきやすい。
でもその分、触れたときの温かさや、光の当たり方で表情が変わるのも魅力です。
実際に住んでいるお客さんからも、「うちはこの床に育てられてる気がする」って言われたことがあります。
その言葉、すごく印象に残っています。
桧|凛として、扱いやすい。でも香りに好みあり
桧は、白くて硬めで、傷もつきにくくて扱いやすいです。
香りが強くて、浴室や寝室に使うとすごく落ち着きます。
ただ、人によっては香りがちょっと強すぎると感じることもあるので、
必ずサンプルを触って、嗅いで、感じてみてほしいです。
僕は、素材との相性は“理屈”より“感覚”だと思っています。
5. 暮らしの中で、素材と向き合うということ
あるお客さんが話してくれました。
「杉の床、最初は傷が気になってたんだけど、今はむしろ“家族の年輪”みたいに見えてきました」と。
また、別のご家庭では、ワックス塗りを“年に一度の家族行事”にしているそうです。
塗るたびに子どもの背が伸びてて、「あぁ、家族も一緒に育ってるんだな」って感じるって。
こういう話を聞くたびに、僕は「自然素材って、ただの材料じゃない」とあらためて思います。
6. まとめ|自然素材は、手がかかる。でも、だからこそいい
自然素材の家は、確かに手がかかります。
でもそれって、一緒に暮らすパートナーとして自然素材を迎え入れるということだと思うんです。
キズがついても、落ち着いて向き合えばちゃんと戻るし、
汚れても、きれいにする方法がある。
むしろそれを知ることで、素材への理解が深まっていく。
僕はそんな「関係性のある家づくり」をこれからも続けていきたいし、
それを求める人たちと出会いたいと思っています。
▶ 素材と向き合う暮らし、見てみませんか?
▶ 経年変化のある家、見てみませんか?
経年変化の美しさって、写真じゃ伝わらないんですよね。
僕たちが建てた家の中には、「完成したときより、5年後のほうが好き」って言ってもらえる家がたくさんあります。
素材が育ったあと、家がどんなふうに味わい深くなるのか。
まずは実際の事例を、見て感じてみてください。
「自然素材に惹かれるけど、うちの暮らしに合うのかな?」
「汚れや傷が気になる性格なんだけど、大丈夫かな?」
僕は、そんな“まだ決めきれない段階の不安”こそ聞いてほしいと思っています。
正直なところ、向き不向きはあります。でも、それを一緒に考えるところから、家づくりって始まるんです。