
無垢フローリングで後悔する理由|“杉20mm”は「設計」で選ぶ
「無垢フローリングに憧れていたのに、正直ちょっと後悔しています…」
リフォーム相談の現場で、僕たちはこの言葉を何度も耳にしてきました。
たしかに、僕たちが標準で採用している杉の20mm厚フローリングは、やわらかく、あたたかく、足触りも軽やかで、空気になじむ最高の素材です。
しかし、その裏側には、無垢材特有の「個性」があります。
- 傷がつきやすい:特に杉はやわらかいため、モノを落とすとへこみます。
- 伸縮する:湿気で反ったり、乾燥で隙間があくのは、木が生きている証拠です。
- 冷たさの誤解:断熱材ではないため、冬場、床下の冷気が伝われば冷たく感じます。
これを知らずに「自然素材=いいもの」とだけ信じて選ぶと、「思ってたのと違う」という違和感が生まれます。
無垢のフローリングが悪いんじゃない。「設計」が足りないだけ
無垢材が扱いにくいのではありません。“暮らしに合わせた設計”がなかったから、後悔が生まれるのです。
杉のフローリングには、厚み・やわらかさ・経年変化という独特の個性があります。それが、日当たり・湿気・家族構成といった条件を無視して使われると、どんなに高価な素材でも、ただの扱いにくい床になってしまいます。
逆に、設計が調和すれば、傷や隙間は「味わい」や「人生の履歴」になっていく。
だからこそ、僕たちは杉を選ぶとき、「素材の良さ」ではなく「素材の個性を活かす設計」で決めてくださいとお伝えしています。本章では、杉の20mm厚無垢フローリングでよくある後悔の原因と、選ぶ前に知っておきたいリアルな付き合い方を解説します。
杉の20mm厚無垢フローリングが京都の底冷えに合う理由
京都の冬は、ただ寒いのではなく、「底冷えする寒さ」です。さらに、湿気がこもりやすい盆地特有の気候もあり、床材の選び方は、暮らしの快適さを左右します。
ここで、杉の20mm厚無垢フローリングの特性が、京都の家に最適である理由を解説します。
◉ 20mmの厚みが「やわらかい空気」を足元に生む
杉の特長は、熱伝導率の低さと「やわらかさ」です。オークや栗など他の木材に比べて足当たりがふわっと軽い。
この20mmという厚みが、床下からの冷気をやさしく緩衝する**「空気の層」を生み出します。冬の朝、素足で歩いたとき、合板フローリングが「ピリッ」とくる冷たさを感じやすいのに対し、杉の無垢材は温度よりも質感で、足元の冷えをやわらげてくれるのです。
◉ 湿気と乾燥、両方に強くしなやかに動く「木の性格」
京都は、冬は乾燥、夏は湿気がこもります。この大きな変化に対し、杉は素直に反応する素材です。
- 夏:空気中の湿気を吸って調湿をサポートし、サラッとした肌触りを保ちます。
- 冬:乾燥で収縮し、わずかな隙間があきますが、これが素材の「呼吸」です。
隙間や反りも「味わい」として設計に組み込むことができれば、杉材は“手がかかる素材”ではなく、暮らしに寄り添う素材になってくれます。
◉ 傷も変色も、すべてが“風景”になる
杉材は柔らかいぶん、傷がつきやすいのは事実です。しかし、この傷は「暮らしの履歴」になります。
- 子どもが走り回った傷跡。
- 陽がよく当たる窓際だけ、色が濃くなっていく変化。
こうした変化が「経年劣化」ではなく、「経年美化」になるのが、杉の20mmの持つ「許容力」です。冷えと湿気が混在する京都の家にとって、杉の厚みとやわらかさは、設計の“快適な調整材として機能します。
無垢フローリングで快適な足元をつくるには?断熱・下地・気流止めの設計が鍵
「杉の無垢フローリングにしたのに、冬は床が冷たくて…」「自然素材って暖かいって聞いていたのに、期待外れだった」—こうした声の多くは、素材の性能不足ではなく**“設計不備”**が原因です。
杉の20mm厚無垢フローリングは、それ単体では断熱材ではありません。
それでも、きちんと設計・施工すれば、足元からじんわりとしたぬくもり感を得ることができます。
◉ 無垢フローリングは「断熱材」との組み合わせが最重要
杉材は熱伝導率が低く、肌触りがいい。しかし、それは床下からの冷気を遮断できていることが大前提です。
【無垢フローリングでよくある失敗例】
- 断熱材の施工が甘い:床下からの冷気がそのまま伝わり、せっかくの無垢材の良さが活きない。
- 気流止めが未施工:床下の冷たい空気が壁の隙間を伝って床材を冷やし続ける。
- 湿気対策不足:杉材の調湿性能を活かせない構造になっている。
だからこそ、無垢フローリングを選ぶときは、「断熱性能が高い家にするには?」という設計視点が欠かせません。
◉ 杉材 × 断熱 × 気流止めの3点セット
僕たちGreener’s Houseでは、杉の20mm無垢フローリングを標準採用しつつ、その性能を最大化するために、以下の設計・施工ルールを徹底しています。
- 床下の徹底対策:床下に高性能な断熱材を敷き詰め、気流止めを併用し、隙間風による冷気の侵入を完全に防ぎます。
- 下地構造:捨て貼り+根太レス構造を採用し、床のたわみを防止すると同時に、気密性をしっかり確保します。
- 水回り対策:洗面・脱衣所などには局所断熱と湿気制御設計を導入し、温度差やカビの原因を排除します。
この「3点セット」により、無垢材の断熱性・調湿性・感触が、設計的に最大限に引き出された空間になります。
断熱や気密に関する詳しい記事はこちらから👉「小さな高断熱の家」を京都で建てるなら、なぜ断熱素材はグラスウールがいいの?グリーナーズハウスから伝えたいこと
◉ 暮らしの“動線と足元の温度”が合っているか?
単に「暖かそう」で終わらせないために、リフォームの段階で「断熱計画と空気設計」をセットで考えるべきです。
- キッチンで長時間立つ場所は、冷たさを感じていないか?
- 洗面・廊下・リビング間の足元温度差が、快適さを阻害していないか?
- 子どもやペットが素足で過ごす床の**「傷の受け止め」と「空気の流れ」**は整っているか?
断熱材・気密処理・下地設計、そして杉材の特性。これらすべてが重なって、はじめて**“心地よい床”**ができあがるのです。
傷や変化は暮らしの履歴|杉のフローリングを“風景”にする生き方
「無垢フローリングって、すぐ傷つきますよね?」「水をこぼしたらシミになるし、掃除も面倒そう」—その通りです。杉材は完璧な素材ではありません。
しかし、僕は思うんです。
“完璧”じゃないからこそ、愛せる床になる、と。
◉ 杉材の「不完全さ」こそが魅力
杉の20mm厚フローリングは、足を踏んだときにわかる「たわみのなさ」と「やさしさ」があります。
ですが、家具を引きずればすぐに跡がつき、おもちゃや鍋を落とせばへこみ、日当たりの差で色ムラや濃淡が生まれます。
これらはすべて、「経年変化」ではなく、暮らした証です。
◉ 僕たちが見てきた“傷ついた床”は、どれも美しかった
カタログには載らない、「人生の履歴」が刻まれた床を見てきました。
- 子どもが初めて歩いた跡が、玄関近くに残る家。
- 鍋を落としてできたへこみが、家族の話題になっているリビング。
- 陽の当たる窓辺だけが色濃くなった、穏やかな寝室。
無垢の杉材は、そんな暮らしの風景を、足元からそっと受け止めてくれる「許容力のある素材」なのです。
◉ 無垢フローリングを後悔しない選び方とは?
大切なのは、素材そのものよりも、「その素材と、どんな暮らしをしたいか?」という視点です。
「傷がつかない床」がいいなら、合板のフローリングを選べばいい。でも、「暮らしがにじむ床」がいいなら、杉の無垢材が向いています。
杉材は、完璧ではありません。でも、それを「不完全さの美しさ」として迎え入れられるかどうかが、後悔と愛着の分かれ道になります。
暮らしを支える床としての“木”をどう迎えるか?杉材とともに生きる設計の哲学
「木の床、いいですよね」そう言われるたびに、僕はこう思います。“いい”かどうかは、設計次第なんです。
無垢の杉フローリングは、手がかかる素材ですが、そのぶん空気と調和し、人の動きに寄り添い、暮らしに風景を生む素材です。だからこそ、僕は杉材を**“ただの床材”**として扱いません。
**設計という言葉で、杉の声を聞き、その個性を活かす。**それが私たちキノスミカの仕事です。
◉ 暮らしの哲学がある人にこそ、無垢の床は似合う
- 傷を味として見つめられる人。
- 完璧よりも時間の重なりを愛せる人。
- 自然素材を、インテリアではなく人生の一部として迎えたい人。
そんな方にとって、杉の20mm厚フローリングは、ただの床ではなく「暮らしの根っこ」になります。
無垢材で後悔する人がいるのは、素材ではなく**“付き合い方の準備”が足りなかっただけ**です。
木の声を聞くこと。空気の設計を丁寧に描くこと。暮らし方と足元を、静かに整えること。それが、私たちが考える床のデザインす。
まとめ|杉の20mm無垢フローリングで後悔しないために|設計と素材と暮らしの調和を考える
無垢フローリングに対する「憧れ」だけでは、京都の厳しい気候では快適に暮らせません。リフォームで杉の無垢材を選ぶなら、「設計と素材の整合性」が何よりも重要です。
| よくある無垢フローリングの後悔 | 後悔しないために必要な設計と心得 |
| 冬に床が冷たく感じる | 断熱・気密・換気をセットで設計すること。床下断熱や気流止めを計画段階で明確にする。 |
| 傷がつきやすい、隙間があく | 杉の20mm厚という特性を理解し、柔らかさ・経年変化を**“素材の味”として受け入れる暮らし方**を描く。 |
| メンテナンスが必要 | **傷や変色も「履歴」**として楽しめる価値観を持つこと。 |
| 素材選びで満足してしまった | 素足で歩く暮らしを設計で支えること。暖かさややわらかさを床材に求めること。 |
杉の無垢フローリングは「設計と使い方次第で、人生の一部になる」素材です。
無垢材を選ぶということは、単なる床材選びではなく、「自分たちはどんな空気の中で暮らしたいか?」を決めるということ。
素材の良さではなく、暮らしへの設計力が、後悔を防ぎ、愛着に変えていくのです。
🌿 もっと深く、もっと自由に。暮らしの選択肢を広げたいあなたへ
家づくりに、正解なんてありません。でも、「これなら、自分たちらしく暮らせそう」と思える選択肢は、ちゃんとあります。そのために、僕たちは情報を届けています。
あなたも、京都の厳しい気候に負けない、愛着の持てる無垢の床を設計しませんか?
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