片づけられないのは、あなたのせいじゃない
「また散らかってきた…」「昨日せっかく片づけたのに、もう元通り…」
そんな風に、片づけについてストレスを感じている方は、本当にたくさんいます。
特に共働き世帯や子育て中のご家庭では、
「片づける時間もないし、気づいたら部屋がカオス」という声をよく聞きます。
でも、ここで大事なのは、
片づけられないのは“あなたの努力不足”でも“性格のせい”でもない、ということ。
◆ かつての僕も“散らかし屋”でした
実は僕自身も、若い頃はまったく片づけができないタイプでした。
カバンの中にはレシート、玄関には脱いだ靴がいつまでも。
「いつか片づけよう」と思いつつ、結局どこから手をつけていいのか分からず、後回しにしていました。
でも、建築に携わるようになって、あることに気づいたんです。
片づけって、才能じゃない。空間のつくり方で変わるんだと。
◆ 片づけられない本当の原因は“空間”にある
たとえば、リビングに書類やおもちゃが山積みになっている家。
それを「性格の問題」と決めつける人もいますが、
僕が見ると、そのほとんどは「使う場所に収納がない」だけなんです。
子どもがランドセルをダイニングに置きっぱなしにするのは、
そこに“しまう場所”がないから。
郵便物や文具が溜まるのも、“仮置きできる定位置”がないからです。
実際に、収納の位置をほんの少し変えただけで、
家が驚くほど整った事例もたくさんあります。
◆ データでも明らか|「収納はあるのに片づかない」現象
たとえば、住宅・インテリア産業協会の調査では
「収納は足りている」と答えた家庭のうち、**56.2%が“片づけに悩んでいる”**という結果もあります。
つまり、「収納がある=片づけられる」ではないということ。
問題は**“量”ではなく、“使い方”と“位置”**にあるんです。
◆ 家族の誰もが“自然に戻せる”仕組みをつくる
家は“帰る場所”であると同時に、“動く場所”でもあります。
だからこそ、「動きの中に片づけの仕組みを組み込む」ことが大切なんです。
鍵は玄関で、文具はダイニングのすぐ横に、洗濯物は干す場所の近くに。
家族みんなの“使う動線”に合わせて収納の位置を設計すると、
無理に片づけようとしなくても、自然と戻せるようになります。
◆ あなたのせいではないからこそ、“変えられる”
片づけられないのは、自分がだらしないからでも、
時間がないからでもなくて、
**「空間に仕組みがなかっただけ」**なんです。
だからこそ、それは変えられる。
収納の位置、モノの定位置、動線。
この3つを見直すだけで、「自然と片づく家」は、ちゃんとつくれます。
次の章では、
「では、なぜ収納をつくっても片づかないのか?」
──その“本当の原因”を、さらに深掘りしていきます。
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収納を増やしても片づかない理由とは?
「片づけられないのは、収納が足りないからだ」
そう思って、収納家具を増やしたり、DIYで棚を作ったり──そんな経験、ありませんか?
でも実際には、収納を増やしたのに、なぜか余計に散らかるというケースがとても多いんです。
この章では、片づけても片づけてもスッキリしない原因を、設計の視点から紐解いていきます。
◆ 散らかる原因は「収納量」ではなく「収納の使われ方」
片づかない家の特徴を見ていくと、共通しているのが、
“しまう場所”が暮らしの動きに合っていないという点です。
たとえば、こんな場面。
- 子どもがランドセルをリビングに放り投げる
- ダイニングにいつも文房具や書類がたまる
- 脱いだ服が洗濯カゴに届かず、床に落ちる
これらは「収納が足りない」わけではなく、
“使ったその場で戻せる場所”が用意されていないことが原因なんです。
◆ よくある誤解:「とりあえず棚を増やせば解決する」
あるご家庭では、リビングに子どものおもちゃがあふれている状態でした。
「収納がない」と言われていたので、棚を2つ追加。
しかし数ヶ月後には、その棚の上までモノが山積みになっていました。
僕が訪問して確認したところ、
“遊ぶ場所”と“片づける棚”が、完全に別の場所にあったんです。
「しまうのが遠い」=「出しっぱなしになる」
この関係性は、大人にも子どもにも共通しています。
◆ 片づかない家は、“仮置き”の定位置がない
もうひとつの大きな原因は、“とりあえず置く”ための受け皿がないことです。
僕たちも、毎日こんな感じで暮らしていますよね?
- 帰宅して、とりあえずカバンを置く
- 仕事帰りにポストの手紙をテーブルに置く
- 家事の途中にメモやペンを置いておく
こうした**「仮置き行動」**は人間のごく自然な動き。
でも、それを想定した収納がないと、家中が“とりあえず置き場”になってしまいます。
だからこそ大事なのは、
「とりあえず置いてもOKな場所」を、最初から設計しておくこと。
◆ データで見る“片づけの失敗あるある”
ある民間調査では、住宅購入後に「もっとこうすればよかった」と後悔した点の1位は、
収納の“使い勝手の悪さ”(※リクルート住まいカンパニー調査)でした。
収納はあっても、“どこにあるか・どう使うか”が暮らしに合っていなければ、
逆にストレスの元になってしまうんです。
◆ 片づけやすさは、「収納の量」ではなく「設計の質」
片づかない家を変えるために必要なのは、
収納を増やすことではなく、“戻しやすい動線”と“しまいやすい配置”を整えることです。
それは家具やDIYでは補いきれない、設計の領域。
でも一度そこを整えてしまえば、
「がんばって片づける暮らし」から「自然と整う暮らし」へと、大きく変わっていくんです。
次の章では、その“整う空間”をつくるために、
実際に僕が取り入れている5つの設計工夫をご紹介します。
自然と片づく家をつくる5つの設計術
ここまでで、「片づけられないのは性格のせいじゃない」という話、
そして「収納を増やすだけでは片づかない理由」について、お伝えしてきました。
では、どうすれば自然と片づく家になるのか?
この章では、僕が設計の現場で大切にしている5つの工夫を紹介します。
① モノに“住所”をつくる【定位置収納の設計】
まず何より大切なのは、「すべてのモノに定位置をつくること」。
つまり、使ったモノが“帰る場所”を決めるということです。
たとえば:
- 鍵・印鑑・マスク→玄関横の小引き出し
- 文具や充電器→ダイニング脇の棚
- 郵便物や書類→リビングのカウンター収納
重要なのは、“よく使う場所の近く”にあること。
そうすることで、わざわざ片づけようとしなくても自然と戻るようになるんです。
② 「見せる収納」と「隠す収納」のバランス設計
全てを見せると散らかって見えるし、全てを隠すと使いにくくなる。
そこで僕は、**“収納のグラデーション”**を設計に取り入れます。
- よく使うもの→オープン棚やガラス扉に
- 見せたくないもの→扉付き収納に
- お気に入りだけを“飾る”場所もつくる
ポイントは、“整えたくなる場所”をあえて設けること。
小さな見せ場があるだけで、暮らしへの意識が変わります。
③ 素材の力で“整える意識”を育てる
素材にも、実は片づけの力があります。
たとえば、杉の無垢フローリング。裸足で歩いたときのやさしさに、自然と「この上にはモノを置きたくない」と思うようになるんです。
珪藻土や漆喰の壁は、光を柔らかく反射して、空間を穏やかに整えてくれます。
素材の質感や表情が、暮らしに対する意識を“自然と丁寧に”してくれるんです。
④ 動線に沿った収納で、片づけやすさを仕込む
収納は「場所」ではなく、「流れ」の中にあるべきです。
たとえば洗濯の場合:
- 洗濯する
- 干す
- たたむ
- しまう
この流れがバラバラの場所にあると、片づけが面倒になります。
でも一列に並べたり、回遊できる動線を設計するだけで、家事も収納もグンとラクになる。
「片づけを意識しなくても整う」──それが、動線設計の理想形です。
⑤ “ととのう暮らし”は、今の家でも始められる
「うちはもう建っている家だから、整えるのは無理かも」──そう思っていませんか?
でも実は、片づけやすい家は“あとから”でもつくれます。
- 使う場所に小さな棚を置くだけ
- 動線上に“仮置き”スペースを設ける
- 家族の荷物の流れに合わせて“戻す習慣”をつくる
こうした小さな工夫だけでも、
“出しっぱなし”が減って、驚くほど空間が整っていきます。
もちろん、リノベや設計から整える選択肢もありますが、
まずは今の暮らしの中に“整う仕組み”を仕込むことからでも、十分効果は出ます。
大切なのは、「空間は変えられる」と知ること。
無理なく、できることから。そこから“ととのう暮らし”は始まります。きます。
整えるために必要な「3つの設計ポイント」
ここまでお伝えしてきたように、片づけは性格の問題ではありません。
空間に“整う仕組み”さえあれば、誰でも自然に片づけられるようになります。
この章では、僕が実際の設計やアドバイスの中で意識している、
片づけやすい家づくりの3つの設計ポイントをご紹介します。
① 「使う場所のすぐ近く」に収納をつくる
もっとも基本であり、もっとも効果が大きいのが、
**“使う場所のすぐ横にしまえる収納を設けること”**です。
たとえば:
- ハンコや鍵 → 玄関横の引き出しに
- 文房具 → ダイニングテーブルのすぐ横に
- 洗濯物 → 干す場所のすぐ近くに収納を設置
このように、“使う・戻す”の流れを分断しない位置に収納を設けることで、
「出しっぱなし」が自然に減っていきます。
② “とりあえず置き”を設計に組み込む
「とりあえずここに置いておこう」──これは誰にでもある行動です。
だからこそ、それを**“悪い習慣”と決めつけるのではなく、設計に組み込む**のが正解です。
たとえば:
- 郵便物・カギ → カウンター収納や壁のくぼみへ
- カバン・買い物袋 → 玄関〜LDKの間に“仮置き”スペースを
- 子どもの持ち物 → 帰ってきた導線上に「戻しやすい場所」を
「とりあえず」が散らかりになるのではなく、
“一時置き”を想定して設計することで、整えることがラクになるのです。
③ 「家族の動線」単位で考える
収納は、“誰がどこで何を使うか”をベースにしないと機能しません。
だから、設計では**“家族全員の動き方”を具体的にイメージする**ことが必要です。
たとえば:
- パパは玄関でカバンを置く→そのまま洗面所へ
- ママは買い物袋を持ってキッチンへ直行
- 子どもはランドセルを置いて、ダイニングの椅子へ
このように、家族の行動パターンを観察し、それに収納を合わせることで、
「出しっぱなし」が“戻すのが当たり前”に変わっていきます。
◆ 小さな違和感が、大きなストレスになる前に
- 「あれ?しまう場所がない…」
- 「遠いから、あとで片づけよう」
- 「面倒だからここに置いちゃえ」
──この“小さな面倒”の積み重ねが、家全体の乱れにつながります。
逆に言えば、片づけがラクになる設計を少し入れるだけで、暮らしのストレスは激減します。
「しまいやすい家」は、「使いやすい家」でもあります。
そしてそれは、間取りや収納の“配置”で実現できる技術です。
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整った暮らしがもたらす変化と“心の余白”
片づく家になると、何が変わるのか?
単に「部屋がきれいになる」だけではありません。
僕がこれまで設計に関わってきた多くのご家庭で感じるのは、
空間が整うと、人の心まで整っていくということです。
◆ “片づけなきゃ”がなくなると、心が軽くなる
施主のA様がこんなふうに話してくれました。
「以前は、“片づけなきゃ”っていつも頭の中にあって、どこかずっと緊張していたんです。でも、今の家では“片づけたい気持ちになる”んですよ。不思議だけど、すごくラクになりました」
A様邸では、リビング横にファミリークローゼットを配置し、
洗濯・収納・キッチンをつなぐぐるりと回れる回遊導線を採用。
「何をどこに戻すか」が自然に家族で共有できる設計です。
その結果、家族全員の片づけのストレスが減り、
“散らかること”が日常から消えていったそうです。
◆ 片づけが習慣じゃなく、“空気”になる
無垢の床や珪藻土の壁、動きやすい動線。
自然素材とやさしい空間設計に囲まれていると、
不思議と「整えたい」「モノを丁寧に扱いたい」という気持ちが生まれてきます。
それは、習慣や意識の問題ではなく、
空間が自然と人の行動を変えてくれるから。
片づけが“がんばる行為”ではなく、
“当たり前の空気”になる。それが「自然と片づく家」の本質です。
◆ 家族みんなが、“整え方”を共有できる
よくあるのが、「片づけはママの仕事」になってしまうこと。
でも、本当に片づけやすい家では、家族全員が“しまう場所”を把握できているので、
「戻すのが当たり前」という文化が生まれます。
- お子さんが自分のランドセルを戻す
- パートナーが洗濯物をしまう
- 家族全員が郵便物や小物を元の場所に戻す
特別なことはしていないのに、
自然と協力し合える空気が生まれてくるんです。
◆ モノに囲まれるより、空気に包まれる暮らしへ
僕が目指しているのは、モノを隠す家ではありません。
モノに振り回されず、
「心地よい空気」に包まれて暮らせる空間です。
- 余白のある棚
- 静かに光が広がる壁
- 足裏が気持ちいい無垢の床
そんな空間には、人の意識を整える力がある。
そしてその力が、「片づけなきゃ」というプレッシャーを消してくれる。
空間を変えれば、暮らしが変わる。
暮らしが変われば、心が整う。
それを僕は、たくさんの家族の笑顔の中で実感してきました。
片づく家づくりを、一緒に始めてみませんか?
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
「片づけられない自分にモヤモヤしていた」
「収納を増やしても散らかっていた理由がわかった」
「整えるって、がんばることじゃなくて、仕組みなんだ」
──もしそう感じていただけたなら、もう最初の一歩は踏み出せています。
◆ 「片づけよう」ではなく、「整う仕組みをつくる」
大切なのは、“がんばって片づける”のではなく、“片づけなくても整う状態”を設計すること。
それは、空間の力で暮らしを変えるという考え方です。
- 家族の動線に合った収納の配置
- “仮置き”すら美しく機能する仕組み
- 整えることが習慣ではなく“無意識”になる空間設計
僕が目指しているのは、そんな「片づけなくても整っていく家」です。
◆ 設計の力で、片づけのストレスは必ず減らせる
建築士としてこれまで数多くの住まいに関わってきましたが、
「収納が少ないから片づかない」というケースは、実は少数です。
むしろ多いのは──
- 「収納はあるのに、なぜか使いにくい」
- 「動線がバラバラで、片づけが面倒になる」
- 「家族それぞれが“どこに戻せばいいか”分からない」
そうした構造的なズレを、設計によって解消する。
それが僕たち建築士の役割だと思っています。
◆ 暮らしの癖に寄り添う設計だから、リノベでも対応可能
「うちは新築じゃないから…」
そんなふうに不安を抱く方もいらっしゃいます。
でも、むしろ今の暮らしに合っていない部分を“見える化”できるのが、リノベの強みなんです。
暮らしの中で感じている不満や“なんとなくの面倒”を丁寧に聞き出し、
そこから収納や動線、空間の流れを再構成することができます。
◆ ご相談はいつでもお気軽に
「こんな家にしたい」
「うちのここ、いつも散らかるんです」
「何が原因か分からないけど、毎日モヤモヤする」
──そんな思いを、まずは聞かせてください。
まとめ:整った空間は、あなた自身を整える
最後に、僕がいつも大切にしている言葉をお伝えします。
「片づけ上手」とは、整う空間を選べる人のこと。
散らからない仕組み、しまいやすい動線、
自然素材に包まれた空間設計──それは誰かのためではなく、あなたの心の余白のためにある。
がんばらなくてもいい。
がんばらないからこそ、続く。
そんな暮らしを、ひとつずつ、一緒につくっていけたら嬉しいです。
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