第1章|「壊すのは寂しい」——その気持ちに、ちゃんと向き合いたい
「できれば壊したくないんです。思い出があって…」
こんなふうに始まる相談が、僕のところにはたくさん届きます。
築40年、50年と経ったご実家や空き家。住まなくなってから何年も経っているけれど、いざ壊すとなると手が止まってしまう。
——それは当然のことだと思うんです。
そこには、家族との思い出が詰まっているから。
「壊す」という選択肢がある一方で、「残したい」という気持ちも確かにある。
僕たちは、その感情にきちんと向き合いたいと思っています。
でも、現実には「どうしていいか分からない」ことのほうが多い
・この家、直せるの?
・いくらかかるんだろう?
・相続したけど、固定資産税が気になって…
・売るにしても、どこに相談すればいい?
実家を相続したものの、何も手をつけられず時間だけが過ぎていく。
京都でも、そういった空き家のご相談は年々増えています。
僕たちは、ただ「リノベーションしましょう」とは言いません。
その前に、あなたの気持ちにきちんと耳を傾けたい。
壊さないという選択肢には、感情だけじゃなく“理”もあるからです。
第2章|「リノベしましょう!」は、ちょっと乱暴すぎる
「今ある家をリノベーションすればいいじゃないですか」
そう言われても、簡単には動けないのが現実です。
なぜなら、多くの人が抱えているのは「家そのもの」の悩みだけじゃないから。
お金、思い出、将来の暮らし、相続、そして情報の洪水——。
それらすべてが絡み合って、身動きが取れなくなっているんです。
◆「相談したら最後、営業されそうで怖いんです」
実際にこんな声も多く聞きます。
・見積もりを取ったら、やたらと営業電話が増えた
・相場が分からないから、提示された金額が妥当なのか判断できない
・そもそも、どこに相談すればいいか分からない
家をどうするか考える以前に、**「誰に、どこまで相談していいか」**でつまずいてしまう。
だから僕たちは、まず“営業しない相談”から始めます。
今すぐ動けなくてもいい。気持ちを整理するだけでも、一歩前に進めることがあるからです。
◆「お金のことが一番不安です」
・リノベにはいくらかかるの?
・補助金って本当に使えるの?
・工事費用以外にどんなお金が必要?(登記、税金、設計料など)
そういった不安を、1つずつクリアにしていくために、僕たちは最初に“全体像の見えるマップ”をつくります。
リノベに限らず、**「お金の見通し」**が立たないと、人は動けません。
だからこそ、無料相談の段階で資金計画の叩き台まで出すようにしています。
第3章|なぜ“住まない家”はこんなにも傷むのか?
「壊すのは寂しい、でも…もう住めないかも」
そんな声をよく聞きます。
実際、相続した空き家に何年も手をつけられず、
久しぶりに玄関を開けたときに広がる、重たい空気や湿気の匂い。
「もうダメかもしれない」と感じた方もいるかもしれません。
でもそれは、古いからではなく、**「空気が動いていないから」**なんです。
家の劣化は「誰もいないこと」から始まる
人が住まなくなった家は、24時間誰も呼吸せず、窓も開かず、換気扇も回らない。
その“静止状態”が湿気を溜め、結露を生み、カビや腐朽菌が広がります。
それがやがて柱や土台にまで影響し、「老朽化」を一気に進めてしまう。
つまり、「空気が動かない家」こそが、最も傷みやすい家なのです。
住まなくても、守る方法はある
空き家にできるだけ通い、窓を開ける。
それができなければ、サーキュレーターやタイマー換気を設置するだけでも違います。
たとえば僕たちは、空き家の再生計画を立てる前に、
**まず空気が「抜ける設計」**を考えます。
風の入り口と出口をつくり、空気が巡るように設計しなおすんです。
そうすることで、空き家は「呼吸を取り戻す」。
家はまた、再び暮らしを受け入れる器になります。
このように、空き家が“壊れる”のは寿命ではなく、空気が止まってしまったことが原因である場合がほとんどです。
あなたの空き家も、まだ「活かす選択肢」が残されているかもしれません。
第4章|「壊さず活かす」は、どこから始めればいい?
「直せば住めるってわかった。でも…実際に何から始めればいいんだろう?」
そんな声に、僕はいつもこう答えます。
**「まずは“暮らしの優先順位”を決めましょう」**と。
どこに、どれだけ、お金をかけるか
断熱を強化したい。水回りを綺麗にしたい。耐震も気になる。
やりたいことはたくさんある。でも、予算は有限です。
たとえば:
- 「冬、寒すぎて布団から出られない」
→ 断熱と気密を優先すべき - 「段差が多くて親がつまずく」
→ 動線と床の高さ調整が先 - 「古い水回りが不快で使えない」
→ 設備の刷新が急務かもしれない
あなたの「不満」や「心配」を棚卸して、
**“どこにお金をかけるべきか”**を一緒に整理することが、再生の第一歩です。
断熱だけじゃ、家は快適にならない
断熱工事をしても、換気設計や気密処理が不十分なら効果は半減します。
つまり、「快適さ」は三位一体。
- 断熱
- 気密
- 換気(空気の流れ)
この3つが揃って、ようやく「深呼吸したくなる家」になります。
「補助金ありき」の計画は危険です
最近は補助金も充実しています。
でも「補助金の範囲でできることだけやる」だと、本質的な改善から遠ざかることもあります。
補助金は“後押し”であって、“軸”ではない。
まずは自分たちの暮らしの本質にとって、何が必要かを考えることが先決です。
リノベの最初の一歩は「インスペクション」
やみくもにリフォームを始めるのではなく、まずは**建物調査(インスペクション)**をしましょう。
- 現在の断熱性能
- 構造の傷み具合
- 湿気のたまりやすい場所
- 空気の動き方
これらをプロの視点で見てもらうことで、お金のかけどころが明確になります。
決して、独りで悩まないでください
「どこから相談していいかわからない」
「一度相談したら、もう営業されそうで怖い」
——そんな声、たくさん聞いてきました。
でも、僕たちは**「押し売り」ではなく、「並走」したい**んです。
空き家が抱える悩みは、断熱や設備だけじゃない。
感情も、お金も、法的なことも、全部が複雑に絡み合っているからこそ、
まずは一緒に状況を整理することから始めましょう。
第5章|壊さずに、そっと考えてみるという選択
「壊すしかないのかな…」
そうつぶやかれた言葉を、僕は何度も耳にしてきました。
でもその声の奥には、迷いや葛藤、そして言葉にならない“引っかかり”があるのだと、ようやく気づきました。
選べないのは、決して“優柔不断”なんじゃない
相続、税金、老朽化、資産価値、家族の思い出。
どれも大切で、どれも現実。
選べないのは、あなたが不器用だからでも、優柔不断だからでもない。
ただ、大事なものが多すぎるだけなんです。
「残す」という選択には、責任が伴うからこそ
壊さずに残す——それは一見、優しい選択のように見えるけれど、
本当はとても勇気がいることです。
- 中途半端に手を入れても住みにくさは残るかもしれない
- お金の問題も無視できない
- 思い出を壊したくない気持ちと、現実の暮らしとのギャップ
何が正解かなんて、誰にもわからない。
それでも、**「もう少しだけ考えてみたい」**という気持ちがあるのなら、
それは、きっと前を向こうとしている証拠です。
僕たちにできることがあるとすれば
それは、「この家にまだ、価値があるのか」を、冷静に一緒に見ていくことかもしれません。
- すべてを壊さなくても良いかもしれない
- 最低限の手入れで済む可能性だってある
- 活かす道と、手放す道、両方を見極めていくこと
「残すか、壊すか」ではなく、
「どう残すか、どう壊すか」を考えるために、静かに伴走すること。
僕たちにできるのは、たぶんそれくらいです。
まずは、悩んだままでもいいから
今すぐ行動しなくてもいい。
結論を出さなくてもいい。
でも、ひとりで抱え込むのは、やめてほしい。
相談したからといって、必ず動かなければならないなんてことはありません。
僕たちは、あなたの「そのままの気持ち」と向き合いたいと思っています。
まとめ|答えは、すぐに出さなくてもいい
空き家をどうするか。
それは、「家」だけの問題ではなく、
これからの自分たちの生き方をどう選ぶか、という問いでもあります。
壊す、残す、直す、手放す。
どの選択も、間違いではない。
ただ一つ言えるとすれば、
「悩む」という時間にこそ、本当の価値があるということ。
焦らなくていい。
世の中のスピードに追いつこうとしなくていい。
その家に込められた思い出や、
これからの暮らしに必要なものを、
ゆっくり丁寧に見つめなおしていけたなら。
僕たちは、その時間に、そっと寄り添っていたいと思っています。
このまま、何も行動しなくてもかまいません。
でも、もしどこかで「ちょっと聞いてみたい」と思えたとき、
その気持ちに、どうか素直になってください。
僕たちは、そのとき、はじめて「お手伝い」できる気がします。
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